異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2004-05-23

食事が終わると、そのまま簡素な酒宴が始まった。

何となく、食事中から酒が出てくるのかと思っていたが、酒の入った小樽が回り始めたのは食事がほぼ済んだ頃だった。

元々あまり酒が得意じゃなかったオレは、程々に付き合うつもりだったが、気が付いたら入れ替わり立ち替わり次々と酒を注がれていた。

この館の連中は、どうやら「酒の席では無礼講」を実践する主義らしい。

たがの外れた飲み方というわけではないが、静かに酒を酌み交わすと言うより、賑やかに飲んで盛り上がるって感じだ。

あれだな。学生が居酒屋でワイワイ飲んでるのに近いかもしれない。

厨房のスタッフを入れて、大体20人ちょっとのメンツは、実にバラエティに富んでいる。

ここでは、普通の人間は少数派だ。

オレとスカアハ姉御とホーサ嬢を人間のうちにカウントしても、合計8人で半数に満たない。他は、妖精族2人小さい妖精族3人、巨人2人、 コボルド5人、有翼人1人という構成。

正直、まだ全員の名前と顔を覚えきれないのだが、向こうにしてみればそんなのお構いなしだ。

気づくと、スカアハのテーブルを中心にオレをつまみに飲むメンツと、順番待ちをしながら盛り上がるメンツの2グループに分かれていた。

まず最初にオレのところへ来たのは、小さい妖精3人+大きい妖精1人のチーム。

ゼーレーヴェーに加えて、リャナン・シーの助手のリュシー・フェイ嬢。

リュシー嬢は、100年前くらい前に大陸から影の島に渡ってきたアルフ族の一人だそうだ。

アルフ族というのは、大別して人間サイズの妖精族のことで、ファンタジーものに出てくるエルフと考えて大体間違いじゃないらしい。といっても、トールキン先生のシルマリルなエルフという感じじゃなくて、耳が長かったりするだけの人間とあまり変わらない種族みたいだ。リュシー嬢も、物静かで落ち着いた感じだが、ごく普通のお嬢さんのようだ。

スプリガン三姉妹は、相変わらずヴェーが絶好調。

「きれいな女の人が多いでショ、ココ?セタンタは誰が好みなノ?」

オレが答えに窮していると、

「あラ?もしかして私が好みとカ~?だめヨ~、私はもっとハンサムじゃないとネ~」

とかぬかしやがる。

ゼーがそれをたしなめ、レーが静かにオレのゴブレットに酒を注いでくれる。

リュシーとは、どんな仕事をしているの?薬草を集めて適切に保存したり薬に調合したりです、なんて話をした。

妖精族の面々は何となく波長が合うのか、気安く話が出来る感じがする。

次に交代にテーブルにやってきたのは、コボルド5人衆だ。

コボルドというと、鉱山に住む妖精というか小人というか、ぶっちゃけ雑魚モンスターっぽい気がするが、どうやら彼らは違うみたいだ。

犬っぽい頭と小柄な人間サイズの体を持つ彼らは、元々は狼の渡り神フェンリルの子孫なのだという。人狼の一族も親戚筋だそうだ。

コボルドの一族は、大陸では人間族と揉める、というか迫害されることも多いそうだが、この島ではうまいこと共存しているそうだ。その秘訣は、彼らが猟犬や牧羊犬の扱いに長けていることだという。この島の人間族に育てた犬を提供する代わりに、彼らの好物の魚を売って貰ったり、持ちつ持たれつうまいことやっているようだ。

5人のコボルドは男性4人に女性1人で、長はナバルという一回り大柄な壮年の男性だ。

ナバルは顔や腕にいくつも傷跡がある凶悪な御面相の男だが、話してみると豪快で親分肌のオッサンだった。

「いえね。あたしみたいなヤクザものが言うのも何ですが、あたしら影の島コボルド族にとっちゃ、女神様は大恩のある御方なんでさ。」

そういって、いかに彼らの先祖がスカアハに世話になったか力説する。

ナバル、左様なことあまり言いやるな。影の島に来た当初はともかく、今うまくやっておるのはそなたら自身の努力故の賜物であろう。」

スカアハがそう言うと畏まってありがたがる彼ら。目を潤ませてるヤツまでいる。

なんていうか、大げさだがなかなかいい連中である。

彼らは、スカアハの羊と馬の面倒を見ているそうで、ホーサの手下みたいな感じのようだ。

最後に交代で来た一団は、人間族4人と巨人1人と有翼人1人。

人間は男性2人と女性2人で、全員いい年のおじさんおばちゃんである。皆エリン族のもので、フィン・マッコール爺さんの下で働いているそうな。厨房と館内の仕事を受け持っているそうだ。

巨人スカゲラクの弟子だそうである。まだ20歳なのに3m近い背丈だ。2mを越えるスカゲラクが小人と言われる理由が分かる気がする。

そして、有翼人フリアイ)の女性、アルケイア。背に翼を持つ人間であるところのフリアイの一族は、主に伝令の役を果たしているという。

このアルケイア嬢、有翼人というと華奢な体に純白の翼を持つ天使のような生き物を想像させるが、その概念とまるっきり別の生き物である。

褐色のマッシブでアマゾネスな体型に極楽鳥のような極彩色の翼。

しかも、オレの前の席にどっかと座ると、いきなり酒をオレのゴブレットになみなみと注いで

「飲め」

一杯飲むと更に注ぐ。もう一杯飲み干すと更に更にもう一杯。

三杯飲んだところでニヤリと笑って、

「いける口じゃないか。オレにも注げ。」

ときた。なんか、スンゴイ生き物である。

オレが、有翼人に対する幻想を述べると、彼女曰く、

「そりゃ、飛天族だ。連中はオレたちみたいに長く速く飛べないし、軟弱だ。モノの役にたちゃしない。」

と切り捨てた。

まぁ、空を飛ぶのは重労働だろうから、その言い分も判るけど。


んで、アルケイア姉御にしこたま飲まされたので、その後のことはよく覚えていない。

蜂蜜酒とリンゴ酒って、口当たりがいい割にめちゃめちゃ回るんだね。うっぷ。