異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2006-01-07

ホーサに手伝ってもらいながら食事を口に運ぶ。

パンも赤蕪も鰯も美味かったし、猪の肉はちょっと癖があったが焼き豚みたいでなかなかいける。熊のシチューは、ちょっと肉が固めだったが、とにかく量がふんだんにあった。

「結局、クマの死体を見損なったなぁ。……なんか、こうして料理されて食事に出てくると、不憫なもんだな。」

オレがつぶやくと、ホーサはまじめな表情で

「熊と一騎打ちして倒した人間なんて、ほとんど居ない。熊も、セタンタほどの戦士に殺されるのなら不満はなかったと思う。」

なんて曰った。

ま、言わんとするところは分からんでもないが。でも、クマはそんなに潔い倫理観を持ったりしないと思うけどね。

「……まぁ、食ってやるのも供養の内か。」

そう思って、良く噛んで食べてやることにする。


「ところで、他の人らはどうしてんの?」

「皆様、宴会を楽しんでらっしゃる。」

食器を片付けながら、ホーサはオレの問いに応えた。

「そういえば……」

「なに?」

「結局、狩りの勝負はどうなったんだ?」

改めて聞いてみる。

「頭数では、スカアハ様の組が一番多かったけれど、猪の頭数では私たちオーディン様の組が一番多かったの。」

え、ちょっと待て。

オーディンのおっさん、今日何頭獲ったんだ?」

「6頭。」

……。

「……無茶苦茶だな、あのおっさん。」

「今日は、オーディン様が自分一人で駆け回っておられたから、私たちは楽だったけれど。」

うーむ。働き者なのはいいが、どう考えても人間の能力を超えてるぞ。

……って、神様だっけか。

「んじゃ、オレ達ヌァザ組が負けってこと?」

ヌァザさんやワンコが芸をやらされてるんだろうか。

「いえ。セタンタの仕留めた熊が、今回の狩りで一番の大物だったし、猪の形でもフィオナさんの猪が一番大きかったの。だから、今回は引き分けってことになった。」

うーむ。どうやら政治的に一番上手く収まるところに収まった感じだな。

「んじゃ、芸の心配は要らなそうだな。」

オレが、溜め息をついて寝床に背中をつけると、ホーサはクスッと微笑んだ。

「皆様、セタンタの歌を楽しみにしていたみたいで、しきりに残念がってた。」

「オレも、美声を披露する機会が無くて実に残念だね。いや、まったく。」

ホントは、歌う機会が無くなって実にラッキーだと思ってたりするけどね。

でも、宴会に出られなかったのは残念だな。

ホーサは、宴会に出なくていいのか?」

「私は、あまり賑やかな席は得意じゃないから。」

そして、はにかむように笑う。

確かに、ホーサは物静かであんまり騒いだりするのが得意じゃなさそうだけど、今までの宴席では嫌がってる感じでもなかったような。

気を遣って、オレに付いててくれるんだろうな。

「……ありがとな。一緒にいてくれて。」

「いいから、寝て。セタンタは、まず自分の体のことを考えなくては。」

毛布を掛けてくれるホーサの手つきが何となく、もう会うこともないだろう故郷の母親を思わせた。