異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2006-01-08

翌朝、目覚めてみると、既に外はいろいろと騒がしい音で満たされていた。

何かを動かしたり、木を叩いたりするような物音が天幕の内や外、そこかしこから聞こえてくる。

なんじゃらほいと思って、外の様子を窺いたいところだが、今のオレは満足に歩くこともできないわけで。

それに、リャナン・シーさんに盛られた薬の効き目が切れてきたのか、体のあちこちから痛みが響いてくる。

「お~い。だれか~。」

うーん。実に情けないというか、心許ない気分だ。

あんまり大きな声を出すとさんざんクマ公にひっぱたかれた頭に響くので、蚊の泣くような声を何度か出してみると、天幕のしきりが開いて、眼帯をつけたひげ面のおっさんが顔を覗かせた。

セタンタ。目覚めたか。」

「ど~も。おはようございます。」

オレが顔を顰めながら応えると、偉大なる片目のおっさんは

「なんだ、その小さな声は。男ならしゃっきりせんか!」

と、馬鹿力でオレの肩を叩いた。

昨日脱臼した左肩を。

「ギ!」

「ギ?」

「ギィヤァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!!!」


「なんだなんだ。大げさな奴だ。熊ぐらいどうと言うことも無かろう。」

と、朗らかに笑うオーディンと、

「そう言ってやるな。彼だって初めてだったんだ。そのうち慣れるさ。」

と、妙なフォローを返すヌァザさん。

「そんなの、あんまり慣れたくないもんですな。」

神々の王二人組にベッドごと担ぎ出されて、オレは天幕の外に移された。

天幕を畳むのに邪魔だってことらしい。

狩りも昨日で終了と言うことで、帰り支度の真っ最中らしく、狩人の皆さんやおばさん連中が忙しなく立ち働いていた。

オレはと言えば、満足に身動きもとれないので、ボーッと見守る以外にやることもない。

時折、オレの側を通るおばちゃんと声を交わしたりするが、

セタンタ様、また熊退治の時はよろしくお願いしますね。」

なんて言って頭を下げられるので、なんだか応えに窮してしまう。

「お、おう、マカシトケ。」

とか、調子に乗って心にもないことを言ってしまう自分が憎いね。

あと、狩人の一人が教えてくれたが、クマの毛皮はきちんと鞣して、後で届けてくれるそうな。

「外套にすると冬場は暖かくていいですよ。あんなに見事な熊革は滅多に手に入りませんし、セタンタ様の勇気の証になりますよ。」

とか言ってくれたけど、そんなの着てたら目立つじゃないか。

でも、ま、せっかくの好意なんでいただきますけどね。クマだって、どうせなら使えるところを使ってやった方が供養になるだろうしさ。たぶん。