異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2006-01-29

「ふむ、そうだ。いいことを思いついたぞ。」

と、宴もたけなわな頃に思いついたように言い始めたのは、随分とエールやワインを聞こし召したオーディンのおっさんだった。

「未来の勇者に、ワシから前祝いをやろうじゃないか。」

といって、おっさんはひげを撫でつつオレのゴブレットに葡萄酒を浪波と継ぎ足している。

「お!いいですね!!さすがオーディンさん太っ腹だね!!」

と、調子よく応えているのは、誰あろうオレである。


実は既にオレ、勧め上手の呑兵衛三人組、オーディンヌァザトートの三人にさんざん飲まされていたり。

オーディンは実に酒癖が悪く、曰く

「我が酒が呑めんのか?」

とか

「よし!気に入った!もっと呑め!」

だとか、

シグルーン!父の代わりとしてこの勇気ある若者に酌をしてやれ!」

とか、あの手この手で呑ませてくる。

さらに、ヌァザさんも勧め上手だ。

「うんうん。確かに君の言うとおりだ。もっとやりたまえ。」

とか

「そうかもしれないな。おや、杯が乾いているじゃないか。」

とか。それとなく注いでくれるので常に呑まされている状態。

おまけに、トートの爺さんが話し上手なもんだから、常時オレを中心に話題が進んでて、席を外して逃れる事も出来ない。

んなわけで、既に自分が何を言っているかもほとんど理解できてなかったりするわけで。


で、前述の台詞の後、

「よし!これをやろう!使え!」

オーディンのおっさんから差し出された物を、ほとんど何だか分からずに、

「ありがとうございます!!このセタンタ、ご恩は一生忘れませんでっす!!」

と叫んで受け取っていた。

「で、なんですかこれは。」

マジマジと見てみると、それは黄金に輝く腕輪だったり。

んー、高そうだな!

「ありがたく頂戴しま~ふ。」

とりあえず腕につけてみる。

「これは私も負けられんな。では、私からは二つ名をあげようじゃないか。」

「ありがとうございますッス!」

ほぼ条件反射で敬礼しているオレ。

「勇者にふさわしい名がいいね。そうだな、『アルトゥルー』の名をあげよう。『熊に勝る』と言う意味だ。」

「イェッサー!今日からオレの二つ名は『アルトゥルー』です!」

と、そこで後ろから鋭い声が飛んできた。

「待て!セタンタ!」

「なんでしょうか師匠!」

スカアハの声に振り向くが、既に視点が定まらないありさま。

「そなた、その腕輪と名前を戴く意味を分かって居るのであろうな!?」

「すっごく光栄なんですねぇぇっっ!」

なんか頭がクラクラする。

「バカ者め。そなたが授かったのは『ドラウプニル』と『最初のゲッシュ』ぞ。」

「ふわ~い~。」

「お二人もこやつをあまり……」

視界が暗転して、その先の台詞がぷつりと途絶えた。