異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2006-01-30

意識が戻ると、戸外からニワトリたちが賑やかな声を上げていた。

窓から差し込む日の光は、既にして初夏の日差しらしい力強さで部屋を照らしている。

そして、その光に照らされたオレの腹の上には、裸足の足がニョッキリと乗っかっていた。

「………」

足首を掴んで、足の平を指でなぞる。

「うひっ」

「…………」

こしょこしょとくすぐってやる。

「あふっ……うひゃ……ひゃん!」

「起きんかい。」

「……ふわーい。」

髪の毛ぼさぼさのケルベロスが、尻尾をだらしなく下げて毛布から這い出してきた。

もはや、家に帰ってもここで寝る気なんですね、ワンコさん。


顔を洗って着替えるが、どうも頭がしゃっきりとしない。

それに、見覚えのない物品が着替えと一緒に置いてあったり。

見事な象眼で彩られた黄金の腕輪とか。

羽根飾りのついた革のサンダルとか。

鍔のない見事な銀色の短剣だとか。

……なんか誰かにもらったような気もする。

とにかく、それらを身につけたちょうどその頃に、ホーサが迎えにやってきた。

「お客様達が出発されるから、見送り。」

ということ。

なんか、割と短い滞在だったのに、何だかいろいろあったな。とか思いつつ、ホーサと連れ立って中庭に向かう。

「ところで、この短剣とか腕輪とかはどっから出てきたんだろう。」

そう聞くと、ホーサは呆れ顔で、昨日オレが客人から授かったんだと教えてくれた。

サッパリ覚えてませんでした。

……とりあえず礼は言っておかなきゃな。


館の正面のアーチの辺りには、既に旅支度の人々が立っていた。

黒いマントと鍔広帽を身につけたオーディンは、しゃがみ込んでシグルーンと何か話している。

青いチュニックと藍色に染め抜かれた革の胴衣を身につけ、剣を腰に佩いたヌァザさんは、大きな鞍袋を丁寧に馬の背に載せている。

えんじ色のローブに身を包んだトートの爺さんは、二匹の蛇が絡み合った複雑な形の杖を手に持ち、ケルベロスに何か説教をして居るみたいだ。

青紫のトーガに身を包んだイリスさんもその横にいる。

尋ねてきた人間の大体半分が残るわけだから、帰る一行が寂しくなるのは当然だけれど。

オレが近づくと、ヌァザさんが快活な声で二日酔いは平気かと聞いてくれた。

「皆さん、昨夜はどうもいろいろ戴きましてありがとう御座いました。」

とりあえず、よく覚えていないがお辞儀して感謝してみる。

んで、腕輪はオーディンのおっさんからで、サンダルはトート爺さんから、短剣はヌァザさんからのもらい物らしい。

「どれもなかなかの一品だから、昨日もいったように注意して使ってくれたまえ。」

と、ヌァザさんからのありがたいお言葉。

……あとでスカアハに使い方をよく聞いておこう。


「ではさらばだ。シグルーン、良き戦士になるべく修練するのだぞ。」

「はい……はいっ!父上!」

ベレヌスも、スカアハ殿によく仕込んでもらえよ。学問ばかりに熱中しないように。」

「お言葉、よく覚えておきます。」

ケルベロス…………。あまり迷惑をかけんようにな。」

「うん!……じゃなくて、はいっ!」

そんな言葉を交わして、保護者の皆さんは家路につかれました。

セタンタ、今度はアスガルドにも遊びに来るがいい。」

アルビオンにも遊びに来たまえ。歓迎しよう。」

「ヘルモポリスやアレクサンドリアにも来る機会があろうな。それにオリュンポスにもな。」

と、ご招待の言葉なども頂戴しました。

機会が有れば行ってみたいけど、そもそもそれは何処にあるんでしょうか。

とか思いつつ見送る中で、何とも印象的な渡り神の一行は次第に小さな影となり、草原の向こうに姿を消したのだった。