異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2006-06-10

「うお。すごいな。」

地面に転がった枝を拾い上げて見てみる。一握りぐらいの太さもある枝が、まっぷたつにへし折れて、いや、爆ぜるように折れていた。

思ったよりも威力があるのもそうだが、この太さの枝に命中させるスカアハの腕も驚くに十分だ。

枝を持って戻ると、スカアハは素早く火皿の中を布で拭ったあと、布の付いたカルカ棒の尻側で銃身を念入りに掃除していた。随分と手慣れた所作だ。

「狙いは正確だし、後始末も早いな。なんか、えらい手慣れてないか。」

とか聞きたくなるのが人情ってモンだろう。大体、『魔女』や『女神』って言葉と『銃』ってイメージはかけ離れすぎている。『ファイアーボール』とか『メテオストライク』とか『アルテマ』とか使うんならまだ驚かないけど、燧石銃ってのはちと生々しすぎ。

「妾が来た当時、この世界で銃や火薬はあまり普及しておらなんだ。精々、陶器や土器に火薬を詰めて爆発させる『爆弾』程度しか無かったのだ。それ故、妾が銃を作らせたのだ。作り上げた者が手慣れて居るのは当然であろ。」

「え!銃ってスカアハが作らせたの?」

「うむ。かつて龍狩りをせねばならぬ事があってな。あやつらには魔術があまり効かぬゆえ、威力のある射撃兵器が必要だったのだ。」

って、龍退治に銃を作らせるってのも、えらくお約束を踏みにじった展開ですな。

「へぇぇ~。龍退治に銃ねぇ。」

と、感心していると、他の弟子連中の様子がやっと目にはいる。

目を見開いて興味津々な様子を見せているのは、意外なことにホーサだった。

食い入るようにオレが持っている枝と、スカアハが持っている銃を見比べている。

同じように銃に見入っているが、疑い深そうな様子なのはフィオナ。胡散臭そうに首を捻ったり。

その後ろのベレヌスは感心した様子だが動揺した様子はない。思ったよりも肝が据わったヤツなのだろうか。

フィオナの横に座っているちっちゃなワルキューレ嬢は、目を点にして驚いている。ていうか、よく見ると顔が蒼白で手が震えている。お子様には刺激が強かったか。

そしてワンコは…………いつの間に移動したのか、数ヤード離れたベンチの影に隠れていた。頭だけ突っ込んでいるので、見えるのはおしりだけ。ふさふさした尻尾を足の間にコンパクトにしまい込み、小刻みに震えていたり。

あ、頭隠して尻隠さずですぞ、ワンコさん。

「そういえば、そなたらも銃を見るのは初めてか?」

弟子達の個性様々な反応っぷりを楽しんでか、ニヤリと笑いながら姐御がそれぞれの顔を見る。

「私は、マナナン様に見せていただいたことがありますから。」

と、ちょっと余裕の表情を見せたのはベレヌスくん。

「ふむ。たしかにマナナンには一丁贈った事があるな。」

「大事にされていますよ、マナナン様。」

「うむ。それは良かった。」

暖かい笑顔を浮かべるスカアハ。そういや、オーディンのおっさん曰く、マナナンなんちゃらってヤツとは友達だとかなんとか言ってたような。なんか、スカアハの朗らかな笑顔を見ても、浮き立つような感じが全然しない。逆に気が重くなるのはなんでだろう。

「私は、初めて見ました。」

「私も、話には聞いていましたが。」

「わ、わたくしも初めて拝見しました。」

と、女性陣。

「その。私も手に取ってみて良いでしょうか。」

と銃に寄っていくホーサ

「一度射撃した後、二射目までどの程度時間がかかるのでしょうか。」

と質問するフィオナ

どちらも怖がっている様子はない。