異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2006-08-12

食事も済んで、一同そろって昼休み。

昼休みの過ごし方は、まだみんな模索している最中のようだ。

ホーサは、これまではコボルドさん達と一緒に放牧場の方で食事を摂っていたのだが、スカアハのカリキュラムが始まるのに合わせて館で昼食を摂ることになったそうで、食事が終わるといそいそと教室の方へ足を向けた。書庫から借り出した物語の本を読むのだとか。ホーサは、馬に乗っているときや剣を持っているときよりも、何か読み物をしているときがいちばん表情が晴れやかな気がする。

ちなみに、本を読むならどこでも良さそうなのに、と思うのはオレのような出版技術の進んだ世界から来た人間の意見であって、この世界では通用しない。何しろ、書庫の蔵書のうちかなりの部分は羊皮紙の巻物であったり、革表や金属表の稀覯本だったりする。迂闊に日の光が強い場所や湿気の多い場所に持ち出そうモノなら、あっという間にボロボロになってしまうのだそうな。また、の本にしてもそれほど耐久性が良いわけではないらしく、扱いは慎重にするよう言われた。

ホーサ以外はと言うと、リャナン・シーさんの散策組に、意外にもフィオナシグルーンが同行するようだ。

「散歩なんて、フィオナにしては珍しいな。」

「珍しいか?周囲の地勢を確認しておくのは戦の基本だぞ。」

「…………そ、そうか。」

何というか、ヘヴィでデューティなお答えありがとう。

リャナン・シー様が薬草や医療術についていろいろ教えて下さるそうだしな。」

ふむ。そう言われるとちょっと興味が湧いてくるな。

シグルーンも、

「まだこの辺りには土地勘がありませんし、いろいろお話を聞かせていただけそうですから。」

と同行することに決めたそうな。

一緒に行って話を聞きたい気もするけど、女性陣だけの一時を邪魔するのもどうかと思う。

というか、聞くに堪えない赤裸々な話題を目の前で展開とかされても困るしな。井戸端会議の会話が聞くに堪えないのは老若男女どこでも変わらない。こないだの狩りでもなかなかおばちゃん連中の会話は凄かったし。

そんなわけで、女性陣を見送る。

「オレはどうしようかな~、昼寝でもするかのう。」

ふと見ると、ベレヌスギリアムさんとマッコール爺さんがなにやら相談をしている。

「裏の小川に浅瀬があるそうですね。」

「この時期はどうなんです?」

「浅瀬の少し上流に淀みがいくつかありましてな。鮭や鱒、鮎などもそこそこ釣れますぞ。」

釣りの相談らしい。

「たった一時間で釣りなんて出来るの?」

ふと疑問を投げかけてみると、マッコール爺さんがニヤリと笑って見せた。

「私は先日の昼休みに鱒を4尾釣り上げてきましたぞ。」

胸を張って自慢する爺さんに、若い二人も色めき立つ。

「すごいですね。なかなか楽しめそうです。」

「実は私、昨日のうちにミミズを掘っておいたんですよ。」

すぐにも腰を上げて出かける体勢だ。

「うーん、面白そうだね。」

セタンタ殿も一緒にいかがです。道具なら私のをお貸ししますぞ。」

爺さんはニヤニヤしながら誘ってくる。この表情は、『同好の士を増やさん』と企んでいるのが見え見えだな。

ここは誘いに乗ってもいいんだが、実を言うとオレ、全く釣りの経験がないんだよね。

「オレ、釣りをやるの初めてなんだけどさ。大丈夫かな?」

爺さんは、ニヤニヤ笑いをさらに深める。

「大丈夫ですとも。お二人とも私が一からお教えしますとも。」

「二人?」

横を見ると、いつの間にやらケルベロスが期待の眼差しを爺さんに向けていた。