異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2006-10-21

「休日ね。……さてどうしたもんかな。」

もちろん、オレに何らかのプランなどあろうはずもない。この世界に来て約2ヶ月が経ち、流石に右も左も分からないと言うわけではないが、この館の周辺にすっかり馴染んだというわけでもない。オーリン族の村に突然出かけたり、狩りに出かけたりはしたが、まだまだこの周辺の地理が頭に入っているとは言い難い。

スカアハも、読み書き優先なのは分かるが、とりあえず影の島の地理だけでも教えておいてくれればいいのに。どこに何があるかも分からん状態では、お出かけどころではない。

かといって、せっかくの休日をただ寝て過ごすのも芸がない。どうせなら、もう少し有意義に過ごしたいもんである。

などと思いつつ、周りの連中に探りを入れてみる。

「明日はみんなどうするつもりだ?何か予定でもある?」

食後の果実ジュースを飲みながらオレが問いかけると、並んで食事していたワンコとお嬢が困ったように視線を交わした。

「オイラ、どっか遊びにいきたいっ!」

「私は……出来ればこの辺を案内していただきたいのですが。」

と、二人ともオレの顔を見る。

「うーむ、案内してやりたいのは山々だが。なにしろ俺自身もこの辺りの地理はよく知らないんだよな。」

「そうなの、兄ちゃん?」

不満げなケルベロスに、苦笑しながら答えを返す。

「ご期待に添えなくて悪いな。なにしろ、オレがこの世界に来てからまだそんなに経ってないんだ。」

「……そう言われてみれば。」

改めてその事実に気づいたように、ぽつりとホーサが呟いた。

セタンタは馴染むのが早かったから。もっと昔から一緒にいたような気になっていたわ。」

確かにそう言われてみれば、ね。

オレは昔から新しい環境に慣れるのが苦にならないというか、とにかく環境適応能力はかなり高かった。もっとも、新しい学校に慣れるとか、新しい職場に慣れるとか、そういった意味であって、決して新しい別世界に慣れるのが得意というわけではないんだけど。

ホーサとは、こっちの世界に来てから一番つきあいが長いしなぁ。ほぼ毎日顔合わせてるし。」

頷きながら応えると、ふふっとホーサの口元に静かな笑みが浮かんだ。

「ま、そんなわけで。オレが道案内ってワケにはいかないな。」

「代わりに、二人は私が案内してあげる。」

ホーサが二人に水を向けると、ケルベロスシグルーンも異議無く案内を頼んだ。

ベレヌスはどーすんだ?」

「私はフィンさんとギリアムさんと釣りに行こうかと。」

ああ、フィンさんていうのはマッコール爺さんのことか。

ギリアムさんとマッコール爺さんも、

「裏の川を上流に辿っていくとなかなか良い釣り場があるそうなんですよ。」

「歩いて2時間少々かかりますが、ちょっとした湖がありましてね。大きめの花鱒や鮎、鯰などが釣れますよ。」

などと楽しげに語ってくれる。暗に一緒に来ないかと言うことらしいが。

「ははは、なかなか楽しそうですね。」

とりあえず当たり障りのない返事をしておこう。釣りがイヤというわけではないが、男ばかりで山歩きというのも今ひとつ華やかさに欠ける気がする。

そしてさっと話題をよそに振る。

フィオナはどうするんだ。」

「私は一度、父のところに顔を出してくるつもりだ。馬で飛ばせば夕暮れ前には余裕で帰ってこれる。」

なぜかしかめっ面で答えが返ってきた。

「……んー、実家に顔出すならゆっくりしてくればいいんじゃ?」

わざと軽く逆撫でしてみる。

「ほんの挨拶をしに行くだけだ。長居するつもりはない。」

ふんと不機嫌な鼻息一つ。どうやら、親とは折り合いが良くないようだ。騎士になる云々の話以来親子仲がこじれているのかもしれん、と勝手に推測。