異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2006-11-04

結局、貴重品である地図は貸してもらえなかったが、そのうち筆写させてもらうことにした。スカアハによると、自動筆写の魔法という、便利なのかそうでないのかイマイチ不明な魔法もあるそうで、いずれ教えてくれるそうだが。

書庫から借り出せた本は、最終的に

  • 魔術の手解き』
  • 『戦史読本』
  • 『フェイメープル童話集』

の三冊。

ちなみに、『戦史読本』の著者は姐御本人だったりする。

「妾が著した物ではあるが何分時間を経ておる故、些か中身は古びておるやもしれぬ。だが、初学者の手引き程度にはなるであろうて。」

などと言いながら渡してくれたのだが、自信と不安がない交ぜなのか、視線が左右に散ったりと珍しく落ち着かない様子であった。

きっと、あんまり他人に読ませる機会が無かったんだろうな。

「著者本人に詳しいことを聞けるのは助かるなぁ。ありがたくお借りします。」

とオレが礼を言うと、嬉しげに口元を綻ばせたり。時々、妙に初々しいところが垣間見えたりするからこの人もアンバランスで不思議な人物ではある。

ま、可愛いから別にいいんだけど。


丁寧に油に包んでもらった本を落とさないようにゆっくりと部屋に帰ると、なにやら部屋の前で待ちかまえている人影が。

「兄ちゃん遅いよ!」

可愛らしいペパーミントグリーンの寝間着を着たヤツが、ナイトキャップをフルフルと動かしながら文句を垂れた。どうやら大きめの帽子の下で耳が動いているらしい。

「……そのカッコはなんなんだ?」

「えへへ。ホーサ姉ちゃんに貸してもらったんだ。」

嬉しげにニヘラと笑うケルベロス

「なるほど、それでちょっと裾が長めなわけな。」

ワンピースドレス風というのか、フリルや丸いポンポンの付いたネグリジェというのか。とにかくスカート状になっているその裾は、ケルベロスのくるぶし近くまで覆っている。うむ、生足が見えないワンコというのもなかなか珍しい眺めである。

それにしても、ホーサはこんな可愛いパジャマで寝てたのか。うーむ、見てみたいな。

ニヤニヤしながらホーサの寝間着姿を想像していたら、胸を張ったワンコがしびれを切らした様子で訊いてきた。

「なぁ!オイラ可愛いかっ!?」

「……んー、まぁまぁ似合ってるんじゃないか?」

よしっ、と拳を握るワンコ。仕草と服装が全然合っていないのだが、ま、それは良いとして。

「んで、お前は何でこんなところで待ちかまえてたんだ?」

「え?もう寝ようと思って。」

なに言ってんのとばかりに小脇に抱えた枕をオレに示してみせるお子様。もう忍び込むことすら面倒くさくなったのか、それとももはや自分の寝床がここだと思っているのか。

色々言ってやりたいことがこみ上げてくるが、どうせ何を言っても無駄だろうと思うと、ガスが抜けるように気持ちが溜め息に乗って外へ出て行く。

「しょうがねぇなぁ。」

ドアを開けてやると、ケルベロスは寝間着の裾を尻尾で揺らしながら、いそいそとベッドへと乗り込んだ。

「へへへぇ~。明日は姉ちゃんとオイラとシグルーンで、風車やひまわり畑を見に行くんだ~。」

などと楽しげに語っていたワンコは、オレが着替え終わる頃には寝息を立ててすっかりと寝入っていた。