異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-02-03

結局、フィオナはそのまま1週間戻らなかった。

翌日に日曜日を控えた7月7日の夕方、課業を終えてご同輩達と今の授業の中身について教えあったりしていると、教壇の姉御からお声がかかった。

ホーサ。それにセタンタ。話がある故、夕食前、今しばらくしたら妾の部屋に参るがよい。」

「はい、師匠。」

「お?……へ~い。」

小気味良く返事するホーサにつられてオレも返事を返す。

オレとホーサの返事を確認して頷くと、姉御は教室を出て行った。

「なんだろ、話って。」

「わからないわ。だけど、きっと……」

「……フィオナ絡み、だろうな。やっぱ。」

ホーサと顔を見合わせる。

オレ達スカアハの弟子一同は、やはりあの女騎士の不在を気にしていた。

弟子の顔ぶれがフィオナを含めた今のメンツになったのは、実質的にはこの二週間ほどの話なのだが、それでもその人がそこにいるのに慣れ始めたところで、急に居なくなってしまうと随分気になるモノだ。

ましてや、多少粗暴ではあるものの、その堂々とした態度はある意味頼りがいがあるともいえる。存在感は渡り神連中を差し置いてナンバーワンとも言える。その不在が気にならないわけがない。

実際、師匠たるスカアハも時折何か考えているような表情を見せていたしな。

「あれかね。フィオナの様子を見てこいとかそんなのかね?」

「たぶんそうね。」

そんな風に話し合っていると、後ろから興味津々で聴いていた人々が。

フィオナさんのご実家はどちらでしたっけ。」

タラ、と仰っていたように記憶しておりますわ、ベレヌスお兄様。」

タラって、オイラ達が船降りたところだ。割と大きな町だったよ。」

「私はタラではなくフォアセットまで船で来たので、タラにはまだ行ったことがないんですよね。」

などと、なにやら一緒に連れて行けと言いたげなご様子。

「はいはい、分かった分かった。スカアハに聴いてみるよ。まぁ、ホントに様子見に行くかどうかも分からんから、あんまり期待しないでくれ。」

つい苦笑が漏れる。

物見高いというか、好奇心が強いというか。

いや、きっとそれだけフィオナのことをみんな心配していたんだと好意的に思っておこう。


ホーサに連れられてスカアハの私室へ。

そういえば、スカアハの私室に呼ばれるのは初めてだ。位置を知らないのでホーサの案内に従って館の中を歩いていく。

意外なことに、スカアハの部屋は一番奥まった場所にある古く小さい別棟にあった。

荒い石組みの隙間を漆喰で繋いだ壁。その上には比較的大きな石板積みの尖った円錐屋根。些か黒ずんだ壁には蔦が夥しくはい回り、全体的に緑色のベールで包み込んでいる。

渡り廊下を伝ってその古びた棟に着くと、ホーサは石段を3段ほど上って扉を叩く。

建物同様、やはり年季の入った簡素な木製の扉が乾いた音を立てると、しばし間をおいて内側から扉が開く。

「二人とも参ったか。中に入るがよい。」

戸口からスカアハの姿が覗いた。ちょうど帽子を取ったところだったのか、髪を下ろして首筋から胸元へとまとめて垂らしている。白いうなじがちらりと見えて何だかドキドキした。

「おじゃましまー……いてっ!」

何となくボーッとして部屋に入ろうとしたら、入り口の鴨居に頭をぶつけてしまった。

「この部屋は他の棟と違って戸口が低いのだ。気をつけよ。」

額を抑えて唸っているオレに、姉御が苦笑しながら言った。