異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-02-10

ホーサと目配せをして、話をさっさと元の方向に戻す。

いつも冷静な姉御が僅かながらとは言え度を失う話題となれば興味がないわけがないのだが、このままこの話題を続けるとやぶ蛇というか余計なとばっちりを食らいそうというか、とにかく身の危険を感じる。

「……えーと、フィン・マッコール爺さんは、たしか元大族長だったんだよな?仲裁に立って貰うとかどうよ。フィオナと親類ってことは、フィオナのオヤジさんとも親類なんだろ。」

我ながらいいアイディアだと思ったんだが、こちらも一蹴される。

「コノーアはフィンの義理の甥に当たるのだが、この二人、些か折り合いが悪くてな。」

と言葉を濁す。

「フィンは長く大族長としてエリン族を束ねてきたが、その間、アルビオンや大陸の諸族と交流を深め、影の島への移民についても融和的な策を採って参った。だが、コノーアは三年前にフィンの後を継いで大族長の地位につくと、より保守的な策を採るようになった。これは、他の氏族の意見に押されてのものである故、致し方ないのではあるが。」

どうやら、こちらの人間関係にもなにやら対立要因があるようだ。

「フィンはコノーアの才覚を認めておるし、まださほどの年齢でもあらぬ故、成熟すれば良き族長としてエリン族をまとめ上げることであろうと期待しておる。さりながら、コノーアは偉大な先代であるフィンに対して随分意識しておるのだろう。その口出しを嫌っておるのだ。さればこそ、フィンもフィオナに関してはさほど強くは言えぬ訳だ。」

えーと、つまり。

「……言えば言うほど意固地になる、とか。」

「そういうことだ。」

ははぁ。どうやら世代交代のせいで、微妙な軋轢があるようですな。

「じゃぁ、結局誰かが言ってその大族長を諭すって訳にもいかんのだな。オレ達はホントに様子を見てくるだけでいいのか?」

どうも、真意が読めないので確認しておく。ただ様子を見てくるだけであれば、館のおっちゃんに行ってこさせるか、グラナおばちゃんに頼んで報告して貰えばいいような気がする。わざわざ俺とホーサに行かせると言うことは、きっとフィオナを連れ戻して貰いたいのだと思うのだが。

「もちろん、早々に連れ戻して貰いたいのではあるが、そなたらの説得だけで事が簡単に済むとは思えぬ。」

「じゃ、なんでオレ達なの?」

「妾の内意を言外に伝えるためぞ。フィオナを連れ戻すために、弟子とはいえ渡り神を遣わすのだ。直接言いはせぬが、それだけ妾がフィオナのことを気に留めておることは、コノーアにも十分伝わろう。」

「あー、なるほどね。オレ達は、行って何かをする事より、使者として出向くことに意味がある訳ね。」

「然り。」

スカアハは、口元に笑みを浮かべた。俺を見る双眸が、上手くやれと俺に語りかけている気がする。

「わかったよ。余計なことは言わずに、スカアハの弟子は同輩思いの奴らばかりだって事をきちんと示してきますよ。」

「うむ。ホーサも、セタンタが羽目を外さぬように見張っておくように。頼んだぞ。」

「はい。」

クスクスと二人で笑ってやんの。

「分かってるよ、今回は余計な騒ぎを起こさないように自重するって。」

仏頂面で言ったら、余計笑われた。

「まぁ、目付役というわけではないが、そなたらと共にリャナン・シーにも赴いて貰うことにした。ちょうど良い折に、タラに妾宛ての交易品も届いておる故、引き取りも兼ねてな。また、荷の確認にレーと、フィンの配下からも一人同行する。当然、ギリアムにも同行させる。出発は明日の朝食後と致す。二人とも準備を致しておくがよい。」