異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-03-18

手早く身支度を調え、マウルさんを先頭に村人達の声に押されるようにして、オレ達は村を出た。

村の男達は、準備が整い次第、近隣の村からも応援を受けて後を追ってくる。もし連絡が付けば、タラの赤枝の騎士達もやってくるという。

オレ達の荷物は、ほとんど村に着いたときのままで、食料だけを足した。食料はとりあえず二食分だけ手分けして持ち、マウルさんはギリアムさんの後ろに乗せて貰う。街道を進める間は馬で移動し、山に踏み入る段階でマウルさんは徒歩に変わる予定だ。

ちなみに、オレは馬が無くても騎乗扱いである。……まぁ、いいけどさ。


小走りとは言え、馬の軽快な速歩に息も切らさず追従する人間というのもちょっと異様な光景だろう。しかも、そんな状態でありながら雑談を試みてみたり。まぁ、オレの感覚的には気持ち早足で歩いているレベルなので、かなり余裕があるのだが。

全く持ってトート爺さんの靴様々である。

「一つ聞こうと思ってたんですが。」

馬上のマウルさんとギリアムさんを見上げる。二人とも上下する馬の背に揺られて、オレよりも体力使ってそうである。

「何ですかな。」

言葉少なにマウルさんが応える。どうやら、乗馬の様子を見る限り、マウルさんはあまり騎乗が得意ではないらしい。確か、まだ影の島ではあまり馬に乗って移動すること自体が普及していないという話だから、マウルさんも馬には乗り慣れていないのだろう。たぶん、戦車の方には乗れるんだろうな。

そんなことを考えながら、質問を口にする。

「何度か名前を耳にしたんだけどさ。マウルさんが前に勤めてたって言う『赤枝の騎士』っていうのはどういうものなの?」

オレの問いかけに、マウルさんもギリアムさんも、一瞬驚いた表情を浮かべ、それから何かに気付いたように頷いた。きっと、なんでそんな基本的なことを知らないのか驚いてから、オレがこの世界出身でないことに思い当たったんだろう。

無理もない。オレもこの世界に馴染んできたせいか、時々その事実を忘れそうになることがあるし。

心の中で首を竦めるオレに構わず、マウルさんの説明が始まる。

「赤枝の騎士は、元々数百年前にあったというエリン族の王国の戦士達が属していた戦士団でした。」

と、語り始めるマウルさん。

要約すると、かつて存在したという伝説的な騎士団から名前をいただいて、フィン・マッコール爺さんが立ち上げた騎士団なのだという。

もっとも、騎士団といってもオレがイメージするようなものとはちょっと違うようだ。

騎乗して戦う騎兵ではなく、二頭立ての戦車で戦う。

封建社会の契約騎士階級とは異なり、王や大族長から扶持を与えられるお抱え戦士。

だが、統率の取れた軍隊としてよりは、個人の武勇で個人の信ずる正義を行う権利を持つ。

……なんか、役割的には軍人であると同時に、保安官+判事的な法執行官制度のようである。

「武勇・忠節・友愛。スカアハ様に武をもって仕え、エリンの民を護り、世の不正義を糺す。それが我ら赤枝の騎士です。」

胸を張って応えるマウルさん。

「赤枝の騎士は、皆二つ名をもって知られるんです。マウル殿の『風読み』のように、私の伯父の『鉄拳』ですとか、今の団長であるアルノル殿の『鬣』ですとか。土地の人間は、こども達でさえ皆、赤枝の騎士の名を諳んじているほどです。」

なるほど、凄い人気だな。まるで有名スポーツ選手並の知名度だ。

「そういや確か、フィオナも赤枝の騎士になりたいって言ってたよな。」

ふと思い出した疑問を言葉に上らせると、二人ともうーんと唸ったきり、さっきまでの自慢顔が思案顔に変わってしまった。

「どうしたの?黙っちゃって。」

「……フィオナ殿は、たぶん赤枝の騎士にはなれないと思いますよ。」

マウルさんが苦笑しながら応えてくれた。

「でも、スカアハは応援してたけど?」

「ですが、コノーアが反対してますからね。」

マウルさんは首を竦めた。