異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-06-02

脳裏に、明確な想念を喚起する。

手に握られた、白銀の光を放つ長大な槍。それは、光の速さで走り、標的を射抜いて一撃の下に屠り去る。何人たりとも逃れ得ぬ死の運び手。

『行くぞノゾミ!』

『ワカッタ!』

光霊と、一瞬だけ心を交わす。力強い返事に笑みがこぼれる。

その高揚感に押されるまま、腹の底から詠唱の声を絞り出す。

「汝は光!汝は槍!瞬速をもって貫き屠るもの!」

体勢を整え直して、こちらに雄叫びを上げて突きかかろうとする髭ことペリグを尻目に、両手に握った槍の穂先を見上げる。

「汝の名は"雷光の槍(ゲイボルグ)"!!」

オレの叫びと同時に、木槍から光芒が一条、また一条と漏れ、周囲に光が満ちた。

耳を叩く轟音と衝撃。

まるで数百もの雷が同時に落ちたような破壊的な響きが周囲の空気を満たし、目を灼く閃光が周囲を全き白に塗り替えた。

そして、光が次第に薄らいでいくと、オレの手の中には輝く神木の杖、いや、一振りの光の槍があった。

空気の流れが収まると、周囲からどよめきの声が上がる。それは、オレの手の中で神々しいまでに燦然と光を放つ槍に向けられたものだろう。

「……うわ。」

その槍を見上げて、思わず声が漏れてしまった。

怒りに駆られたせいで多少イメージが荒かったのか、その姿は前回のシンプルなシルエットとは全く趣を異にしている。

全長10フィートの既にして長大な槍は、その先に5フィート以上(1.5m)もの光り輝く穂先を新たに生やしていた。青白く闇夜に光を放つそれは、巨大なくさびというか鏃のような形をしている。その刀身から放たれる幾筋もの光が、まるで逆棘のように飛び出して凶悪な形を成している。全体として、全長15フィート(約4.5m)の無数の棘が生えた巨大な銛の様な有様となっている。

ハッキリ言って、この見た目は呼び出したオレでさえ素で引いてしまうヤバさ加減だ。

「……な、なんだそりゃ!」

聞こえてきた息をのみこむ声に視線を向けると、正面にペリグが呆然と立っていた。

両手をだらりと下げ、目と口をこれ以上ないくらい開き、オレの方を放心したように眺めている。

「やっぱり神だったんだ!」

「いくらお頭でも、あんなのに勝てるわけがねぇ……」

周囲からも、ざわざわと交わされる声の中から不安に満ちた言葉が漏れ伝わってくる。

かなりカッとなって衝動的に魔術を使ってしまったが、どうやらド派手な音と光が威圧効果を生み出してくれたようだ。怪我の功名と言うべきか。

瞬間的に涌いた怒りは急速に冷めていき、逆にこの場をこの勢いで収めてしまうべきだと理性が囁き始めた。

そう思ったのつかの間、耳に入る言葉の質が次第に変わっていく。

「こうなったらもう、全員でかかるしか」

「ばかっ!殺されるぞっ!」

どうやら、威圧効果が効き過ぎて逆効果になりそうだ。機先を制しないと不味いことになりかねない。

「ペリグ・ドルドニー!」

その場にいる全員の視線がオレに集まる。

ここで説得できなければ、もう殺すしかない。やれることはもはややった。それでも死を選ぶなら、それはオレの責任じゃない。

そんな、かなり割り切った気分で口を開く。

「汝、無法の輩よ!これは最後の警告だ!我が前にひれ伏し許しを請うがよい!」

「な、なんだと!俺様が」

オレは、その言葉を最後まで言わせずに槍を振るった。