異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-06-17

セタンタ様。先ほどの地響きは一体?」

こども達の後ろから、弓を担いだ長身の男がこちらにやってくる。

「よぉ、タム・リン。お守りご苦労さん。」

手を振ってやるが、ニコリともせずにオレの前に立つと、

「向こうの方には無法者はいませんでしたから、どうと言うことは。」

と返事を返す。ホントに愛想のない男だ。

「どうやら片付いたようですね。」

縛り上げられた男達を眺めながら、タム・リンは淡々と口にする。

「あー、さっきの地響きは、威嚇に光霊を使ったんだ。連中、なんとか降伏してくれたよ。」

「そうですか。……ところでこちらの方々は。」

そういって、妖精騎士はオレの横を指した。丁度、無法者達を縛り上げたギリアムさんに、ホーサが馬の手綱を渡しているところだった。マウルさんはその横で、うなだれて座る悪党達を悠然と眺めながら懐から木製のパイプを取り出している。

「じゃ、せっかくだし紹介するわ。」

三人に声をかけると、その場でこちらを向いた。

「まず、彼はタム・リン。妖精騎士、だっけ?」

すらりと背の高い弓手を紹介すると、タム・リンはしなやかに身をかがめて礼をした。

「我が名はタム・リン。妖精の養い子にして、エヴィン・エマルの女王エルド・ノル・フェイに仕える森の守護者です。どうかお見知りおきを。」

実に丁寧な挨拶であるが、その視線は明らかにホーサ一人を見つめている。さっきまでの冷めた態度と比べて、今度はずいぶんと熱の籠もった視線である。

……余計な騒ぎを起こさなければいいんだが。

「さっき聞いたと思うけど、こちらの女性は交易商の娘さんでオイフェさん。えーっと……無法者にとっつかまってた人質の一人だ。」

オイフェ嬢は、実に優雅にお辞儀をして見せた。

タラに住まっておりますノルド族の交易商、ミョイグネンの養女でオイフェ・イグラドセンと申します。この度は皆様のおかげをもちまして、無事に危機から脱することができました。心より御礼申し上げます。」

そして夜目にも眩い笑顔。その声音や所作、どれをとっても様になっている。正直なところ、無法者達が手に入れたものの中で一番価値があるのはこの人の身柄ではないだろうか。何はともあれ、この人が無事で何よりだ。

「そして、その後ろの7人の子供達も人質になってた。」

幾分背の高めな少年から順に、名を名乗って口々に礼を述べていく。最後は昨日掠われたばかりのベルナーの妹二人が、舌足らずな声でお礼を言った。

「で、こっちの方だけど。」

一応こちらも紹介しておくべきだろう。

「この人がギリアムさん。女騎士フィオナ・マッコールの従者をしてる。本人も腕の立つ戦士だ。」

「いや、私はほんの従者ですから。」

馬の手綱を引いたギリアムさんを紹介すると、苦笑しながら会釈をした。

「んで、こちらの方がマウルさん。『風読み』と呼ばれた元赤枝の騎士だ。」

そう紹介すると、こども達から歓声が上がる。特に男の子なんかは明らかに敬意を込めた視線を送っている。

「いや、もはや引退の身でしてな。お恥ずかしい。」

照れた様子で帽子を軽く上げて挨拶をするマウルさん。もういい年のオッサンなのに、こういう所作も実に渋くて格好がいい。

「こっちの娘はスプリガンレー。えーと、オレの相棒というかお目付役、って感じかな?」

「い、いえいえ、そんな!お目付なんてとんでもありません!」

慌ててなにやら否定するレー。恥ずかしげと言うか恨めしげにと言うか、レーは横目でこちらをちらりと睨んだ。

「わ、私は、ベェルの娘レー・フェイです。」

一呼吸して息を整えると、レーはオレの肩でちょこんとお辞儀した。声こそ小さいけど、最近段々と態度が堂々としてきた感じがするな、この娘は。

「んで、オレがスカアハの弟子で渡り神セタンタ。まぁ、知ってるだろうけど。」

軽く言うと、タム・リンはちらりと会釈を見せただけだが、残りのこども達が一様に驚嘆の声を上げた。オイフェ嬢まで、「あらあらまぁまぁ。」などと口元を押さえていた。あんまり驚いている様子に見えないけど。

「そして、こちらが俺の姉弟子で馬の女神エポナの娘、ホーサ。」

「……よろしく。」

こども達の歓声や、オイフェ嬢の再度の優雅な最敬礼はともかくとして。ほんの僅かに愛想笑いして見せたホーサの前に即座に進み出て跪いたヤツが一名。

「噂に違わずお美しい、ホーサ様。」

そやつは陶然とした表情でホーサを見上げると、呆気にとられるホーサの左手を取ってその甲に口づけした。

「タム・リンと申します。どうかお見知りおき下さい。」