異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-06-24

レー。悪いけど、交代の時間になったら起こして。」

「はい。」

そんなやりとりの後、睡魔に引きずり込まれて眠りに落ちた次の瞬間、肩を揺すられて目を覚ました。

さっきまでの暗がりと月明かりは、すっかりと仄かな曙光の輝きに取って代わられていた。

「うおっ、まぶしっ!」

東に見える山の稜線から差し込む朝日が直接目に入る。腕を翳して光を遮っていると、すぐ側から声が掛かった。

セタンタ様、リャナン・シー様達が到着されました。」

「うう。……あれ?交代は?」

「随分お疲れでしたので、寝かせておいてあげようとホーサ様が。」

声に目を上げると、ギリアムさんが丁度こちらを覗き込んでいるところだった。

「えっ、それじゃギリアムさん達休んでないんじゃ?」

「私は昨日の移動を馬上で楽させて貰いましたし。帰りも馬に乗ったまま寝ていられますから。」

そう笑ってはいるが、流石に強行軍とその後の荒事で溜まった疲れが顔に出ている。

「済みませんでした。」

「いえいえ、昨夜はセタンタ様が上手く収拾してくださったので、怪我も大してありませんでしたし。」

謝らずにいられないのだが、軽く笑って返されてしまった。こういうタフで優しい人ってのは、やっぱり感心してしまう。

立ち上がって周囲を見回すと、丁度マウルさんに先導されたリャナン・シーさんと村人達、さらには見覚えのない男達が数人、ゾロゾロと列を成して木立の中から姿を現すところだった。

先頭に立ったマウルさんがこちらに手を振るのと同時に、その後ろから二人の人影が走り出してきた。

一人は薄蒼のケープを身に纏った麗人。まるで疲れを感じさせない軽やかな足取りで近づいてくるのはリャナン・シーさんである。

セタンタ様、どちらですの?」

どうやらお目当てはオレらしい。

「あー、こっちです。リャナン・シーさん。」

ズボンに付いた土や落ち葉を払いながら声をかけると、淡い朝日の中でより神秘的な美しさを見せつける妖精の佳人は、ツカツカと大股にこちらへ近づいてきた。

レーセタンタ様の調子は?」

「少しお疲れのようですが、大事ないと思います。」

どうやらオレの体調が気になっていたようだけれど、本人を差し置いて妖精同士で情報交換ってどうよ。

「……では、今日一日可能な限り安静にしているということに致しましょう。特に魔術は使用しないように。よろしいですわね、セタンタ様。」

何か結論だけ申し渡されてしまいました。

さて、リャナン・シーさんと一緒に飛び出したもう一人の人物はといえば。

「おお!ヨーク!ハンプ!バーク!ウォリック!みんな無事だったな!」

と、探し当てた小屋の中から歓喜の声を上げていた。その人物の足下からは、ブヒブヒと聞きようによっては可愛いかもしれない鳴き声が聞こえている。どうやら、ベルナーは無事ブタを取り戻すことができたらしい。

もっとも、その後ろで幼い妹二人がなんとも言えないしらけた視線を、その兄の背中に向けているのだけれど。

「あー、嬢ちゃん達。向こうで朝飯にしようか。」

村人達が火をおこして朝食の準備を始めたのを見て、そう声をかけると、二人の少女は溜め息をついて頷いた。