異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-09-02

「で、さっきの話なんだけど。」

中庭をゆったり進みながら、話を戻してみる。いい加減焦れてきたし。

「お見合いっていうのはどういうこと?」

「それは、その、だな。」

歯切れの悪いフィオナの横から、カスパルがニヤリと笑う。

「そこはわたくしめが、妹に成り代わりましてご説明しましょう。」

「兄上!」

「エマ。セタンタ様は神様なんだ。聞かれた質問にはきちんと答えないとダメだぞ。お前が答えられないならオレが答えてやるから、ま、心配すんなよ。」

言いよどんでるフィオナを他所に、イタリアンなフィオナ兄がニヒルに片頬で笑って説明を始めた。

「うちの父は、いわゆる一つの大族長なんですがね。エマを政略結婚の駒に使おうと考えていることはご存じですか?」

「んー、大まかには聞いてますよ。フィオナスカアハの館にいつまでも戻って来ないもんで、様子を見て来いって言われてきたんですから。途中色々アクシデントもありましたけどね。」

「それなら話が早いです。」

フィオナ兄はポンポンと言葉を投げて先を進める。

「親父は、男ばかり6人も生まれた後の娘だったんで、エマのことをいたく可愛がってましてね。」

「うん、それは何となく聞き覚えがあります。ていうか兄が6人もいんのかよ。」

「まぁ、我々兄貴どもとエマは、母親が違うんですがね。ま、それは置いといて。」

カスパルは、手振りと軽妙な話し口で続ける。

ちなみに、フィオナの方はというと、何度も小声で抗議しているものの相手にされず軽くあしらわれている。フィオナのいつもの腕っ節からすると、あまり強そうでないカスパル氏ならごく簡単にノックアウトできそうに見えるのだが、安易に手が出ないのはやはり人間関係の賜物なのか、それともどこかにダイハードでスパルタンな女騎士フィオナと、大族長の愛娘エマ姫との切り替えスイッチでもあるのか。もし有るなら是非とも教えてもらいたいもんだが。

「我らが大族長としては、愛する娘を変な男の嫁にしたくない。とはいっても、どうせなら政略結婚として価値のある相手に嫁に出したい。オマケに、可愛がるあまりいいわいいわで我が儘に育てたら、いつの間にか下手な騎士でも勝てないような女丈夫になってしまったので、柔な男じゃ夫はつとまらないときてる。」

「そんな、人をワガママ女のように言わないで下さい!」

そんなフィオナの抗議も華麗にスルー。ていうか、女丈夫とか言われてもそっちは平気なのか。

「そんな条件を満たすような男がそうそういるわきゃ無いでしょう?」

その言葉にうんうんと頷き返す。人格が立派で、毛並みが良くて、なおかつ腕も立つなんて、確かにそんな男まずいないわな。

「で、オヤジ殿も考えたわけですよ。『いっそ渡り神の嫁ならどうよ。』」

「……はぁ。まぁ理屈は分かりますけどね。」

実際、理屈はわからんでもない。少なくとも、毛並みについては別格扱いだし、渡り神って事はそれなりに腕が立つ事が多いんだろうし。まぁ、この場合ヌァザさんとかオーディンのおっさんを脳裏に描いちゃダメなんだろうけど、どうも男の渡り神というとあの二人のインパクトが強すぎる。

「でもさ。それでいきなりオレの嫁とか、飛躍しすぎというか、ちょっと適当すぎというか。」

「まぁ、ですから。セタンタ様がこちらにいらっしゃるのに託けて、見合いの席を設けようという魂胆だったんですな。」

「は、はぁ。さいですか。」

しかしこう、無茶というか無謀というか。良くそんなこと考えついたね、コノーアさん。割と常識人っぽい感じなのに。

それとも……

「……もしかして、この件を吹き込んだのってグラナおばちゃん?」

「ああ、そうらしいですね。よくご存じで。」

な、なにしてくれんだあのおばちゃん!!