異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-10-06

巫女長ネースさんの向こうに座っているのは、さっき出迎えに出てきたメーメルさん。彼には一度挨拶しているが、一応紹介あり。

「メーメルは島でも一二を争う食通でしてね。今宵の料理も、彼が食材を誂えてくれました。」

たしかに、福々しい太鼓腹を見るに食事にはうるさそうである。オレ達から改めて礼をいわれると、額の汗を忙しなく拭きながら嬉しそうにしていた。

このメーメルさん、正直に言ってオレの初対面の印象はあんまりいいものでは無かったのだ。太った商人のオッサン、しかも口は上手くていかにも「新しい有力者とつながりを作って商売のネタにしてやろう」といった雰囲気を漂わせている人物となると、好印象が無いどころかむしろ余りお近づきになりたくない人種である。要するに油断のならないオッサンには用はない。

しかし、食通となれば話は別だ。何しろこちとら、食生活に関しては色々と改善したいと思っているのだ。

今口にしたばかりの晩餐は美味しかったし、普段食べているスカアハの館の食事だって美味しいのだが、それでも色々不満がないではない。もっと出汁のきいた味、イノシン酸やグルタミン酸がタップリ入った味付けが恋しいし、醤油や味噌、あるいは納豆や漬け物といった発酵食品もいずれは食べられるようにしたい。あと、大好物のコロッケやエビフライなんかも再現したい。

「今日の食事には大変感銘を受けました。また、詳しくお話をお伺いしたいです。是非にも。」

オレの言葉に、メーメル氏も大きく頷いた。彼がどういう思惑でこちらとの繋がりを求めているのかは知らないが、利害が一致することを望むばかりである。


メーメルさんの向こうの席には、女性が一人と男性が二人腰掛けている。

女性は、幾分小柄な中年女性だった。僅かに白いものが混じった赤みがかった金髪と、色素の薄い空色の瞳。笑いじわの残る顔には、口元と目元にうっすらと微かな笑みが浮かんでいる。容姿としては取りたてて目立つ感じではなく、穏やかなご近所の奥さんといった風情だが、平凡な容姿と比較してその服装はちょっとすごい。

肩にかけたフード付きのケープは真っ白に染め抜かれている。薄手のその生地は、目にも鮮やかな金糸で縁取られている。そのケープの下には袖が広く裾が長いワンピースを身につけているが、こちらも白一色に金糸で刺繍が施されている。

その向こうに座る男性二人も特徴的な人物だった。

近い方の男性は50歳をいくつかすぎたぐらいの壮年の男性。身の丈はそれほど大きいわけではないが、がっしりと広い肩幅と厚い胸板が迫力を醸し出している。服装は普通のチュニックに革のベストとフェルト地のズボン姿だが、鍛え上げられた腕の筋肉と固くゴツイ手の様子は、力仕事に熟達した人物のそれと思われる。

最後、一番外れに座っている人物は、30代半ばほどの品の良さそうな男性だ。服装は、チュニックではなくドレスシャツの上に革の胴衣を重ね、仕立ての良い綿のズボンを皮のブーツの中に入れ込んでいる。腰には剣帯を巻いて左腰にナイフを吊っている。丁寧に整えた口ひげとあごひげの様子も、あまり見慣れない感じだ。

コノーア大族長は、手前から順に紹介していく。

「この白衣の女性はディオン・フォーチュン殿。白魔術の使い手であり、薬師でもあります。」

「女神様や女王様にはとても及びませんけれど。」

そういって、ディオンさんはリャナン・シーさんに会釈して見せた。

「その向こうが鍛冶師のクアラン。都一の鍛冶師です。」

鍛冶師という言葉は確かに納得できる。あの手や胸板は日々の仕事で身に付いたものなんだろう。厳めしい顔の鍛冶師は、こちらに黙って会釈をして見せた。偏屈、というと聞こえが悪いが、頑固そうな面差しではある。職人らしいと言えばらしいが。

「そして、一番奥に座っているのがカイアス殿。」

コノーアさんが紹介すると、髭の紳士は立ち上がって口を開いた。

「某はアルビオンはログレスより参った遍歴の騎士にござる。名はカイアス・ペリザンドと申します。よしなにお願い申し立てまつる。」

ただいま、客として逗留されておりましてな。と続くコノーアさんの紹介を聴きながら、次から次へと変わった人が出てくるなぁ、なんぞと呆れてしまった。

というか、もうそろそろ覚え切れん。