異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-11-04

「ご案内が遅れまして、申し訳ございませんでした。」

と、ちっとも申し訳なさそうでないエマ姫モードのフィオナに誘われて食堂にはいる。フィオナのせいで遅れたのに、とか、おかげさまでオレ様お腹ペコペコですだよ、とか。いろいろ文句をいってやりたい気分ではあるが、朝っぱらから、それも空きっ腹で口論するなんてのはあまり賢くもないしみっともいい事でもない。

それに、おかげさまでこの杖とノゾミ君の組み合わせで出来ることが随分幅広いことが分かったし、その点はむしろ感謝するべきだろう。

食堂の中には、既に食後のゆったりとした雰囲気が漂っていて、着席している面々は香草茶の香りを楽しみながらくつろいでいた。

昨晩に比べれば随分とこぢんまりとした木の円卓に、5人ほどが席に着いていた。順に、ホーサマウルさん、ギリアムさん、ロイグ、そしてカスパル兄貴である。

「おはようございます、セタンタ様!」

真っ先に陽気に挨拶してくるのは、今日もイタリアンなカスパル兄貴であり、

「昨夜はお楽しみでしたね!」

続いてロイグが戯けたことをぬかしたので、フィオナがすかさず頭をひっぱたいた。

ぱちんと、実にいい響きがする。中身が空のスイカみたいな音だ。

「私とセタンタはまだ清い仲だ!人聞きの悪いことを言うな!」

「おや、聞きましたかロイグ殿。『まだ』だそうですよ。」

「これは意外とやる気満々ですな、カスパル殿。」

赤くなって反応するフィオナが楽しいのか、ロイグもカスパルも、ニヤニヤ笑いながら小声ではやし立てる。

「こらー!いーかげんにしろー!」

騒ぎ立て、唸る拳で実力行使に出るフィオナを、二人で軽くいなしながらもからかうのを止めない。しかし、この光景どこかで見たような。

「ああ。スカアハと、オーディンヌァザ組か。」

大人気ないオッサン二人を思い出しつつ苦笑する。

「おはよう、セタンタ。」

「ああ、おはよう。よく眠れたか。」

ホーサの声に、笑いながら返事を返すと、一瞬むっとした表情、それがすぐに苦笑へと代わる。

「皆食事を済ませて待っているわ。」

「あー、待たせて悪い。」

今朝のホーサは、なにやらあまりご機嫌がよろしくないようだ。とは言え、朝っぱらから待たせてしまったのは確かだしな。

マウルさんもギリアムさんも、おはようございます。すぐ食べますんで。」

「気にしないで、ゆっくり食べてくだされ。」

「私たちはお茶を飲んでますから。」

二人は、オレとホーサのやりとりを横目で見ながら、フィオナと二人組の舌戦を笑いながら眺めていた。

「んじゃ、いただきます。」

朝食は、柔らかいパンとバター、少し臭いの強いチーズとミルク、キャベツとタマネギのスープといったメニュー。付け合わせに小鉢に入った小さな木の実も一掴み出てきた。聞いてみると、チーズとミルクはヤギの乳から作った物らしい。ちょっと青臭いというか、独特の風味がある。木の実の方は松の実だとか。……まつぼっくりなんだろうか?ともあれ、ナッツらしい歯ごたえと味でなかなか旨い。

「で、今日はなんか見物の案内をしてくれるそうだけど。」

オレとフィオナが朝食を食べている間、くつろいで待っている人たち、その代表格らしきカスパルに問いかける。

「ええ。セタンタ様はタラをご覧になるのが初めてだとのことですし、ホーサ様もあまり良くご存じないとのことですから。せっかくなので街の中をご案内しようと思いまして。」

それは実にありがたいが、忙しいんじゃないのだろうか。と聞いてみると、

「わたしは閑職だからヒマなんですってば。」

と朗らかなお返事が帰ってくる。カスパルさん、それでいいのか。

「もっとも、昼前には戻ってきますので、あくまでざっとですがね。トリム港と灯台、市場と市会議場の辺り、あとは城山の上にもご案内しますよ。」

任せて下さい、と笑うカスパル+ロイグ。なんか、悪ガキがそのまま大きくなったような雰囲気だな、この二人。