異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-11-14

「なんか、随分遠くから来てるんだなぁ。」

「ええ。影の島は産物もいろいろありますし、アローンの西の端ではありますが、寄港する船はなかなか多いのですよ。」

にこやかに笑いつつ胸を反らすテオドロ氏。こんだけ多忙な港を切り盛りしてるんだから、胸ぐらい張ってもいいと思う。うん。

「そういや。ホーサも船で来たんだろ?」

一座の中で、間違いなく島外出身のホーサに話を振ってみる。気持ちよさそうに風に髪を委ねていたホーサは、頷きつつ答えた。

「ええ。フンガリアを通ってポンメルやフランドールの国々を抜けて、アルビオンを経てトリムまで。」

ホーサにしてはちょっと珍しい苦笑混じりの返事。理由を聞くと。

「本当は、フランドールから船で来た方が早いのだけど、馬たちを長く船に乗せたくなかったの。それに、私もあまり船が得意じゃないから。」

ホーサにも苦手なモノなんてあるんだな。得意そうな気もするんだけど。そんな言葉を返していると、横からフィオナも一言。

「私も船はあまり好きではありませんわ。足下が揺れて心許ない気がしまして。」

船戦も一応何度か経験がありますけれど。と、すました表情で付け加えた。態度はお姫様だが、やっぱり発言内容は危険である。

「なんか、意外だな。二人ともそういうの平気そうなのに。」

セタンタはどうなの?」

「ああ、オレは、ほとんど船に乗ったことがないんだよね。ぜひ乗ってみたいとは思っていたんだけど、なかなか機会が無くて。」

そんな答えを返しながら、ついつい視線が湾内に列する船舶にいってしまう。

港内に泊まっている船は、マストが一本だけの小さい船や、両舷から櫂を突き出している船が多いようだ。マストが二本以上の船は15隻ほど、三本マストの船は1隻だけで、これは特別大きい感じがする。

「あの、櫂が突き出しているのは、えーと、ガレー船、でいいのかな。」

頭の中に浮かぶ語彙から、適当そうなのを選んで口にしてみる。

「あちらの乾舷の高い船は、ブリガディアのガレーですな。」

テオドロさんは、オレへの説明を楽しんでいるのか、気持ちよく回答してくれる。

「あそこに見える細長いのは、長船とか竜船と呼ばれております。もともとスカディランドールの船ですな。正確には、大きくて帆柱のある物をオーセヴェリ、少し小さくて帆柱を折りたためる物をクバルサンドといいます。あの船はスヴェリのオーセヴェリです。」

「へぇー。そういわれりゃ、確かにあの二隻は形が随分違うね。あっちのマストが3本あるヤツは?」

「あれは海烏号。カラベルという、ロマニアで作られた船です。持ち主はミョイグネン殿ですが。」

この港に入る船の中では3番目に大きい船です。テオドロ氏は流暢に説明すると、そう付け加えた。

ミョイグネン、ってのはオイフェ嬢の父親だっけか。大商人と聞いていたけれど、あんだけでかい船を所有してるってことは、確かに大した事業家であるに違いない。

「もっと大きい船もあるんだ。」

「ええ。『レンジャー』と『ボノム・リチャード』の二隻です。二隻とも女神様が命じて作らせた大船ですよ。」

これもやっぱスカアハか。それにしても、なんか聞き覚えのある名前だな。イマイチ思い出せないけど。『レンジャー』は特殊部隊のレンジャーか?習志野にいるヤツ。

「見てみたいなー、それ。」

「二隻とも、今は遠くへ航海に出ております。いずれ戻って参りますので、そのときにでもご覧になれるよう取りはからいましょう。」

うんうん、そりゃいい。

「楽しみにしてますよ。そんときは是非乗せてください。」

オレが勢い込んで右手を差し出すと、テオドロ氏も堅くて大きな手で握り返してきた。