異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-12-05

んで、ネースさん達に先導されて階段を上がっていく。ちなみに、砦見学に続いてこちらでも両手に花状態。清楚に着飾ったフィオナホーサを左右に議場のテラスへ登っていくと、市場の客や店主などから盛んに声が掛かる。

女性二人に男達から声が掛かるのは既に何度も繰り返された光景だが、場所が場所なのか、今までよりも砕けた声もちらほら掛かる。

ホーサ様ぁ~!可愛い~!」

などと言った奥様方のはしゃぐ声。これに、恥ずかしげにはにかんだホーサが小さく手を振りかえすと、さらにきゃぁきゃぁと歓声が上がる。

「エマ様素敵ー!」

こちらは若い女の子の黄色い声。どうやら、フィオナのファン層は若い女の子にも多いようだ。フィオナは、キツイ目元に微かな苦笑を滲ませていた。こういう、微妙にお姫様らしくない凛々しい表情が、年下の女の子に受けるってのは分かる気がする。っていうか根が男らしいもんな、このお嬢さんは。

そして、もっと黄色い、というかクチバシの黄色い声が。

セタンター!!」

いやに甲高い声にそちらを振り向くと、なにやら見物衆の足下に10人ほどの小柄な人影。着飾った子からちょっと泥がついて小汚い子まで、ガキンチョ達がこっちに手を振っていた。

つーか呼び捨てかよおまえら。

「おうっ」

妙に微笑ましい風景に笑いながら、胸元にガッツポーズを作って返してやると、一瞬首を傾げていたこども達も、一斉にオレの真似をして返してくれた。身なりのいい女の子からちょっとみすぼらしい男の子まで、皆笑顔で歓声を上げた。

うんうん。子供はノリが良くていいね。

そんなところへ変わった一声。

「カスパル様ー!」

お、意外なところで声が掛かったな、などとそちらを向くと、イタリアン兄貴に呼びかけたのは恰幅のいい中年の女性。

「先月の飲み代がまだですよ!きちんと払いに来て下さい!」

「おー!そのうちな!」

って、ツケの催促かよ。

「兄上……。お願いですから、我が一族の評判をお一人で下げないで下さいませ。」

「いやぁ、すまんすまん。」

フィオナのツッコミにも、全く悪びれる様子もなく頭を掻いて笑うカスパル。そして、声を上げて笑う皆の衆。

どうやら、カスパル兄貴はタラ市民公認のダメ兄貴らしい。


「市議会場、通称『首府の丘』は、『主の年より18年』、アローン歴で言いますと1228年の建立です。ですから、創建より131年になります。」

ですから、と言われましてもね。

「えーと、そもそも暦法が良くわからんのですが。」

「はて?女神様にお聞きになっていないのですか?」

そーいや、あんまり詳しく聞いてないな。ていうか、読み書きやら地理やら武術やら魔術やらにかまけてて、まだ歴史には手を出してませんでしたね。

「ええまあ。これにはいろいろと込み入った訳がありましてね。」

わざわざ無学なのを口にするのも悔しいので、誤魔化そうと肩を竦めてみせる。しかし「どのような訳なのですか。」

ネースさんは、邪気のない笑顔であっさりと追求してくる。

「いやね、改めて話すととても長い話なんですがね。」

「それは面白そう。是非伺いたいです。」

ぐぬぅ。めげない人だな。

「まぁ、その。要するにですね………忙しくてまだ教わってないだけですだよ。」

言いつくろった分だけ増してしまった恥ずかしさに目を泳がせて言うと、

「あらまあ。そうですか。」

巫女さんは相変わらず笑いながら納得してしまった。なんというのれんに腕押し糠に釘。