異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2007-12-12

「……うーん。」

思わず唸ってしまうオレに、案内役一行やフィオナの兄弟たちも一様に苦笑を浮かべていた。オレの言わんとするところは既に予想していたのだろう。

「遠慮なさらずに仰って下さい。」

メルキオルがそう水を向ける。

「言わずもがなだけど、」

そう前置きしておく。空気からしてホントに言わずもがななんだが。

「下の市議会や参事会の豪華さと比べて、族長会議の間がこう、なんだ。別に贅沢さが足りないって言う訳じゃないんだが、こんなにこぢんまりしてるのはどうしてよ。」

ノゾミ君が詰まってる槍、というか今は木剣サイズだが、杖を床にカツカツ突き付けてしまったり。その手応えからすると、どうやら床はそれなりの厚さの石を使っているようだ。もちろん安普請であるはずもないが。

「ひとまずお掛け下さい。」

カスパルの声で、皆思い思いの席に腰掛ける。椅子は全部で12脚だから、数は十分にある。

皆が席に着くと、端っこの席に足を組んで行儀悪く腰掛けたカスパルが、相変わらずのスカした態度で口を開いた。

「もともと、この建物は市議会や参事会のために建てられたのではありませんで。本来の名前は『国政議会議事堂』といいます。」

「なるほど。スカアハは、ここをこの島の政治の中心にしようって意図があったんだな。」

それならば、この豪壮極まりない建築物も納得がいく。

スカアハ自身の家は、堅牢だけどこんなに豪華でも絢爛でもない。それに比べてこの議会場は、タイコンデロガ城と比べても見劣りし無いどころか、煌びやかさでは上を行く建造物である。つまりスカアハは、それだけのコストをかけるに値する存在だと見なしていたと推測できる。

ま、周りが盛り上がりすぎちゃって、何となくスゴいものが出来上がってしまったという可能性も否定できないが。特に、この町の人等の渡り神に対する崇拝ぶりはちょっと普通じゃないし。

「さて、女神様は当初こうお考えになっていました。」

『この島全土を一つの国とし、エリンの諸族やコリンの流れを引く諸部族、妖精族巨人族、言葉を知る全ての民が代表を出し合って合議する国政議会が法を定める。そして諸族の代表から選び出した大族長が、その法の下に公平な政治を行う。法の定めに従い、諸族の神職より選ばれた大法廷が裁きを行う。』

「つまり、部族ごとに気ままに争い、気ままな法を振りかざす諸族を、一つの法の下にまとめようと為されたというわけです。」

「なるへそ。『民主主義』と『三権分立』をやろうとしたのか。いや、この場合は『連邦共和制』っていうべきか。」

オレのつぶやきに、皆の視線が集まった。

「なんて言ったの?」

ホーサの疑問に、自分が肝心なところだけ日本語で喋っていたことに気付いた。どれもこれも、アローン語の語彙に適したのがなかったせいだろうか。

「えーと。『民主主義』ってのはそうだな。みんなで話し合って政治とか法律とかを決める事、かな。まぁ、スカアハが考えてたのは、村とか部族から代表者を出して、その代表者が話し合って決めたことにみんなで従うってやり方だろうから、『間接民主主義』なんだろうけど。」

「でも……」

オレの説明に、ホーサは珍しく眉間に皺を寄せて唇を尖らせている。

「大族長は血筋で選ばれるのが普通でしょう?私の故郷では、能力だけでは大族長には選ばれないもの。コノーアさんも、フィン・マッコールさんの娘婿にならなければ大族長にはなれなかったのではないかしら。」

「んー、どう説明したもんか……」

「まさにそれが問題でしてね。」

オレが口ごもっている間に、カスパルがニヤリと笑って指を立てた。