異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-01-26

「で、お頭って誰のこと?」

よってたかって縛り上げられている大男に、しゃがみ込みながら聞き返す。まぁ、状況的に考えれば例の山賊の親玉くらいしか心当たりはないんだが、もしかしたら全くの逆恨みかも知れないし。

しかし、オレの言葉にも全く耳を貸さず、暴漢はひたすら戒めを解こうと哮り立つばかりだ。

「こいつ!いいかげんに大人しくしろ!」

「もう逃げられんぞ!観念しろ!」

衛兵たちが地面に押さえつけ、手足をねじ上げて、さらには拳を振るっても男は抵抗を止めない。

「ぐふー!ぐふー!」

言葉にならない荒い息づかいで怒りを露わにし、その視線はオレを眼差しだけで殺そうとでも言わんばかりに睨み付けている。

コイツとにらみ合っていても埒があかない。ロイグを呼び寄せて相談する。

「コイツ、どうしてこんなことになってるの?」

経緯を聞くと、ロイグは手下の衛兵を呼び寄せて話をさせた。

その話をまとめると、タラ市の城門、それも人通りの多いトリムとの街道に面した門で、この男が数名の男を引き連れ、武器を持ったままで進入しようとしたのだという。衛兵がそれを止めようとしてもみ合いになり、他のもの達は取り押さえたのだが、この男だけが捕まえられず暴れ回っていたのだそうな。

「で、けが人とか出てるの?」

「衛兵に浅手を負った者が2名出ました。他には、市の中で突き飛ばされたものが数名おりますが、幸い大した怪我ではないようです。」

ロイグはその辺の情報を素早くまとめていたようで、オレの問いかけにもすぐさま答えが返ってくる。

「んで、目的は。」

「今のところ掴んでいません。」

そこでロイグは推測も付け加える。

「ただ、セタンタ様を狙ったということは、恐らく昨夜の話を伝え聞いて首領を取り戻しに来た山賊の残党ではないかと。」

まぁ、まずその辺だろうな。オレにも他に心当たりはない。となれば、あとの捜査をロイグ達に任せてオレは高みの見物でいいとは思うが、やはり逆恨みとは言え人にこれだけの憎しみを向けられるというのは気分のいいものではないし、それが止められはしないにせよ、せめてその理由くらいは知っておきたい。

オレは、立ち上がって右手に杖を持った。

「伸びろ、神木の杖よ。」

オレの言葉に従って、腕の長さほどだった木剣は淡い燐光に包まれる。

『ノビルヨ』

ノゾミ君にほんの少しだけ力を注ぎ込むと、僅かに光度を増した木剣は一瞬にして長さを増し、約6フィートのシンプルな杖へと姿を変えた。

「よし。」

杖を携え、芝居がかった笑いを浮かべて、こちらを見上げる男を悠然と見下ろす。

「これからお前の心の中を言い当ててやろうじゃないか。」

そう言い放つと、男は目に見えて狼狽えた。

「や、やれるもんなら、や、やってみ、みろ!」

さっきまでのうなり声から一転して、どこか悲鳴にも聞こえるような叫びがかえってくる。

うん、とりあえず『魔法を使って心を読む』と思わせることで、言葉で言い返す程度には怯ますことが出来たな。

「でも、セタンタ様。そんな魔術はまだ……」

レーの心配は当然だ。

もちろん、オレに読心の魔術なんて使えるわけがない。いや、将来的にどうかは分からんけど、とにかく今はそんなもの使えない。ではどうするかというと、要するにハッタリで脅して多少なりとも情報を得てやろうというわけだ。

「ま、まかせとけって。」