異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-01-27

「開け汝が心」

「語れ汝が記憶」

「示せ汝が思い」

「露わにせよ汝が存念」

「我命ず!汝が本意を語れ!真実の光の前に隠しおおせるものはあらじ!」

それっぽい呪文というか祝詞のようなものを適当に喋って、杖の先を暴漢の鼻先、石畳の上に叩きつける。

『ノゾミ!頼んだ!』

『ワカッタ!』

オレの意志に反応して、叩きつけた杖から辺り一杯に眩い光が煌いた。

「ヒィッ!」「うわぁっ!」

眼前で突然フラッシュをたかれたような格好になった強面の大男の顔も引きつったが、それ以上に周囲の観衆の驚きようの方が大きかった。まぁ、光る以外に実質的な効果は何もないとはいえ、見た目だけは派手だからな。

じろりと見下ろすと、男の顔には既にして気の毒なくらいに怯えが走っていた。さっきまでの凶暴さや虚勢の影は、あらかた払拭されてしまっている。

「さて、これより我の問いかけに、そなたの口は語らずとも我には自ずと真実が示されよう。そなたの心は全て写本の如く我が前に開陳されるのだ。」

あくまでやりすぎなくらいに芝居がかった口調で、そう宣告する。まぁ、実際にはそんな便利なことは起こらないのだが、そもそも脅かすだけ脅かしてゲロさせようという作戦なので念には念を入れて、というところだ。

「まず、そなたの目的は何だ。」

「お、お、オレは……」

「語らずとも良い!」

喋ろうとする男の口を封じるように、強い調子で叱りつける。

「そなたは"海鷲"ペリグの手下だな!」

「う、え、あ」

喘ぐように呻きながら首を縦に振る様子に、内心ちょっとだけ同情しながらも言葉を繋ぐ。

「首領を捕らえた我に復讐し、首領の身を取りかえさんとしたのであるな!」

「は、はは、はい!」

涙目で頷く男にニヤリと笑みを返してやる。

「答えずとも良い。我にはそなたの考えが手に取るように分かるぞ。次は……」

「も、もうお許しくだ、ください!お、おお、オレの心を読まないで、く、くれ!」

完全に哀願口調になった男に、今度はにっこりと笑いかける。

「最初からそうやって素直にすればいいんだ。」

大の男が頬を涙で濡らしている姿というのは、やはり少し可哀想な光景だな。まぁ、そもそもコイツ自身の自業自得ではあるんだけど。

「素直に答えるなら、心を読むのを止めてやるぞ。とりあえず名前は?」

そう問いかけると、泣きながら男は口を開く。

『メリアド』

「め、メリアドで、ご、ございます。」

!!!

なんだ今の!?

「ど、ど、どうさ、されました。」

オレの怪訝な顔に暴漢、メリアドと名乗った男は血の気を引かせた。

「いや。なんでもない。お前の仲間は何人だ。」

『6ニン』

「ろ、ろ、六人で、ご、ございます。」

……まただ。

「よし、嘘はついていないようだな。ならばこれからの詮議は赤枝の騎士・"俊足"ロイグに委ねるとしよう。隠し立てするようなことがあれば、またオレがお前の心を読むぞ。」

「い、い、いたしません。いたしま、せ、せんです!」

ひどい吃音で答える男の前で、もう一度石畳を杖で突くと、軽くカチリと掛けがねの戻るような感触が頭の中で感じられた。魔術が終わった時の感覚。

レー。」

引っ立てられるメリアドを他所に、レーの表情をうかがうと、レーも一つ頷き返した。

「本当に魔術として成立してしまったみたいです。」