異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-02-23

「随分と直截ですな。」

コノーア大族長の真剣な表情に、ごく僅かな苦さが入り交じる。

「この話題は、虚飾抜きの方が取り違えがなくていいんじゃありませんか。」

オレも、あまり硬い表情にならないように気をつけながらも、真剣にコノーアさんを見返す。

「分かりました。お話しします。ですがお願いがあります。」

「他言無用、ですね。もちろん、誰にも言いやしません。コノーアさんの許可が出ない限りはスカアハにも内容は伏せておきます。」

安心させるように肯く。もちろん、これは出任せではなくホントのことだ。

「ただ、話を聞いたか聞かないかは報告しないわけにいかない。そうしないと、オレが痛くない腹を探られるかも知れないからね。まぁ、我がお師匠様は変な勘ぐりはしないだろうけど、余計な心配をされるかも知れないから。」

それでいいよな、と後ろにも質問を投げかける。少し離れた戸棚の上でこちらの様子を窺っていたレーへの問いかけだ。

「あ、その。かまわないと思います。たぶん。」

そう慌てて答えたレーは、少し外の空気を吸ってきますねなどと言いつつ、窓の外の張り出しの方へと姿を消した。どうやら気を効かせてくれたらしい。

「わかりました。それで結構です。」

首肯するコノーアさん。

「些か長い話なのですが、ひとまず掻い摘んでお話ししましょう。」


コノーアさんの話は、ポイントを押さえた分かりやすいものだったが、それでもそこそこ長かった。

まず、大前提としてこの世界の一般的な政体について話してくれた。これは恐らく、オレがこの辺の仕組みを良く知らないというのを事前に知っていたからだろう。

「恐らくご存じだと思いますが。」

そう前置きしてくれるが、知らないこともかなりあった。

そもそも王とは何か。その定義から入る。コノーアさん曰く、王とは

  • 神の直系子孫。
  • 自らの属する神族によって承認された領主。
  • 同じ民族を率い、神に代わって王国を支配する。

という存在だという。これはもちろん、オレの知る王という概念とよく似ているが、ここで言う神が実在する人物であるという点が大きく異なる。

ともかく、アローンに存在するほとんどの国家は、この王という定義に基づいて君主を戴いていることになる。(もちろん例外はある。ロマニアやギリキアなどには共和制の小国も少なくないそうだ。)

そして、多くの国においては王は複数の貴族、豪族や部族長といった存在に国の象徴として担がれていると同時に、互いの利害調整を図るための裁判権を預けられている。つまりは、民を直接統べるのではなく、民を統治している領主や君主を統率する立場と言うことになる。

一般の民からすれば、彼の属するべき集団はまず家族であり、その家族が属するのは氏族であり部族であり、王は彼らの代表ではあるが遠い雲上の存在という他はない。

あるいは、より貴族制の強い国、例えばソルメールやポンメルといった国では、民は貴族によって領有される存在である。貴族によって所有される民、即ち平民は、奴隷ではないが明確に貴族とは区分けされている。

こういった支配体制を取っている場合、王の存在は多分に象徴的なものであるが、その抽象性ゆえに民の帰属意識を植え付けることが出来る。また、部族民や平民と簡単にいっても、それはオレの知る無力な農民とは全く違うもののようだ。これまで出会った農村の連中もそうだったが、彼らは戦うことに不慣れではあっても暴力に全く無力というわけではない。いざとなったら武装して徒党を組むくらいのことは平気でする。だから、王権が平民の崇拝によって支えられ、貴族たちと拮抗しその横暴を掣肘していくような構図を取る場合さえもある。

また、国同士の付き合いも王と王が対して行うのが普通である。王がいない国家でも、元首には王としての体面を与えるのが一般的である。もっとも他の国からは「王を選挙で選んだ」と嘲笑を買うことがあるそうだが。

いずれにしろ、王とは国家の存在を正当化する存在であり、権力の焦点である。即ち、王こそが国家の顔であると考えるのが一般的だという。