異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-03-22

女中さんに案内されて食堂へ。

さすがにもう道は覚えたので自分一人でも行けるのだが、着替えも案内も立派な彼女らのお仕事だというので邪魔するわけにもいかない。身分の高い人物を持て成す時には当たり前なのだそうな。面映ゆいような鬱陶しいような。

でも、上げ膳下げ膳掃除洗濯着替えまでやって貰ってると、地位が高いと実感するよりも、無能力者扱いされてるような感じもしたりする。どうやらオレは、思ったよりも貧乏性らしい。いちいちお付きの人とか付けてたら効率悪いじゃん、などと考えてしまう。

それに、仕事をしないで楽なのはいいが、人に気を使わなきゃいけないのでそれはそれで疲れる。

ともあれ、フィオナホーサレーリャナン・シーさん、それにマクアノール六兄弟の下三人とともに朝食をとる。ギリアムさんは親類のところに朝から顔を出しているらしく不在。マウルさんは赤枝の騎士と一緒に屯所で朝稽古だそうだ。また、コノーアさんも仕事のために朝食は一緒に出来ないそうだ。

「ちゃんとみんな朝飯食べてるのかねぇ。朝飯は一日で一番重要な食事だから、きちんと食べないと。」

ホカホカの白パンに豆のシチューをちょっと載せて、かぶりつきながらそんなことをぼやく。うん、相変わらずこの城の食事はなかなか旨い。味付けはちょっと塩加減が大雑把だったり出汁の利きが今ひとつだったりもするが、素材が良くて作り立てを食べられるのが何より大事って事だろう。

セタンタ。それ、スカアハ様の口癖がうつったのね。」

くすくすと笑うホーサに、そういえばスカアハに同じ事を言われて窘められたんだったなと思い出した。

「師匠の教えがちゃんと身についてる証拠ってわけさ。」

照れ隠しに胸を反らしてみせると、一座から笑い声が上がった。


食後、お茶というか白湯が饗される。手元の椀からは少し刺激のある匂いが立ち上っている。一口含んで味わうと、舌がピリリとしびれる感覚とともに、仄かな甘さが口腔に満ちる。ショウガの刺激と、甘みは蜂蜜だろうか。いわゆるショウガ汁とかショウガ湯というやつだ。エリン族にとっては、高価なお茶よりもずっと身近な食後の一服である。

「でさ。今日はなんか予定あるんだっけ?」

フィオナに尋ねる。なお、メルキオルもカスパルもバルタザルも、ショウガ湯をきゅっと飲み干すと慌ただしげに席を後にしている。やはり、例のスカアハ行幸で彼らも忙しいんだろう。

「特にはございませんが。もしお暇でしたら、城内や市内に色々ご案内できる場所はございますわ。城内ですと、山上の城郭や書庫、あるいは宝物庫などもあります。市内でしたら、植物園や練兵場、馬場などが面白いでしょう。」

口ぶりからするに、ホントに見せたいと思ってた部分は昨日のうちに回ってしまったので、その他の部分はこちらの気分次第ということのようだ。

「そうだなぁ。まぁ、その辺は追々回るとしよう。」

これから数日の間に、また暇になれば見物に連れて行って貰いたいところだが、正直昨日の今日ではちょっとおなかいっぱいである。それに、どうにも気になっていることがあるので、そっちを先に片付けておきたい。

「……一つ頼みがあるんだけど。」

「なんでしょうか。」

オレが含みを持たせた聴き方をしたせいか、フィオナも怪訝そうな声で応える。

「昨日取り押さえた山賊の一味、親玉や山中のアジトで捕まえた連中と一緒に捕らえてあるんだよな。」

「ええ。城の地下牢に。」

うへぇ。ホントに地下牢なんかあるんだ。なんかファンタジーみたいだな。

ってまぁ、ファンタジー世界なんだけどさ。紛うことなく。

「んじゃ、連中と話をさせてくれないか。いくつか聞いてみたいことがあるんだ。全員じゃなくても構わないから、親玉と部下数人でいいよ。」

「それは……」

「よろしいでしょう。私からアルノルかルーイに段取りをさせます。」

言いよどんだフィオナの後ろから声が割り込んだ。声の主は、手元になにやら書類を抱え込んだコノーア大族長だった。

「その代わり、と申し上げるのは些かはばかりがあるのですが、私からも一つお願いが。」