異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-03-23

コノーアさんのお願いというのは、スカアハとの話し合いの段取りを事前に確認して欲しいというものだった。

「議題や出席者などを、急ぎ取り纏めさせました。それを一度見ていただけないかと思いまして。」

コノーアさんは、どうやら寝ていないようだ。顔の端々に疲れが見える。とはいえ、その疲れ以上に眼に力があって、徹夜くらいではこの人の活力を損なうことは出来ないらしい。年齢勘定をすると、確かもうすでに50代のはずなんだが、ほとんど老いは感じられない。やはり、これくらいエネルギッシュな人でないと一国の為政者など務まらないんだろうな。

「それは構いませんが、オレ一人よりもここにいる全員で相談に乗った方がいいんじゃないですかね。少なくとも、リャナン・シーさんやホーサはオレよりもスカアハとのつきあいは長いでしょうし。」

「仰るとおりです。いかがでしょう、ホーサ様、リャナン・シー殿。相談に乗ってはいただけませんか。」

勢い込んで尋ねたコノーアさんに、二人も、さらにはフィオナも当惑した表情を返した。

「ああ、掻い摘んで説明しますよ。」

要するにこういう事です、と要点だけ説明する。

  • 共和制無理じゃね? 現状はきちんと共和制になってないし。
  • 王制の方が良くね? 妖精族もまとめて国に出来るし。
  • 隣のメイヴやばくね? スカアハ居ないと喧嘩売ってくるよあいつ。
  • といった内容をスカアハに相談したいけど姐さん怖すぎ。

「ってことなんだわ。」

「……そう。」

「なるほど。」

ビミョーな表情をしたホーサリャナン・シーさんに、コノーアさんも苦笑した。

セタンタ様、少々平たく仰りすぎです。」

「まぁ、この際分かりやすい方がいいでしょ。」

肩を竦めてみせると、コノーアさんは苦笑を深くした。

「……父上、よりにもよって、なにもセタンタ様にそれをご相談なさらなくても。」

フィオナに至っては、口調こそ丁寧だが大変失礼なことを口走る。その言い方だとオレが全く当てにならんみたいではないか。話し相手くらいにはなるんだぞ、これでも。

ともあれ、事情は概ね飲み込めたようだから、話を先に進めよう。

「で、どんな議題と出席者なんですか。」

「こちらをご覧いただけますかな。」

コノーアさんは、手元の挟み(いわゆるフォルダというかバインダー)から羊皮紙を一枚取り出して見せた。

「なになに。『我らが慈母たる女神にして畏敬する女王スカアハ様、臣ら慎み畏まりてご挨拶申し上げます。ご機嫌如何にございましょうや。』……ナニコレ。」

「奏上文の草稿です。女神様にこの文面を差し上げまして、御裁可を仰ぎます。出席者は私と城代、大判事長、巫女長それに閣僚を予定しています。」

羊皮紙に描かれていたのは、実に面6枚を超える長大な文章だった。長ったらしい挨拶が終わり、2枚目でやっと本題に入ったところでオレは溜め息と共にをめくる手を止めた。

「えーと、段取りの確認ですけど。まずこの書面を手渡すんですよね。それからは?」

「ご一読いただき、ご判断いただきます。」

「……説明とか、出席者同士の質疑応答とか、資料提示とかは。普段の会議ではそういうのちゃんとやってるんでしょう?」

「ご質問があれば直ぐに回答や資料をお持ちいたしますが。」

本気で怪訝そうな表情のコノーアさんに、本気で空を仰ぎそうになった。

「一応オレの意見を言っておきますね。押しつけるつもりはありませんので、飽くまで参考意見ですが。」

そう前置きして指摘する。

一つ、文面が冗長すぎる。もっと簡潔に議題を整理して、1枚にまとめること。

一つ、きちんと数字をまとめた資料を添付すること。数字は概要が分かればいい。

一つ、スカアハに全て思考を預けるのではなく、出席者全員で討議する形をとること。

一つ、出席者同士の模範応答を事前に作成してリハーサルしておくこと。

一つ、実務レベルが分かる人間を臨席させること。騎士団の人間や議員など。

「早い話が、結論をいくつか用意してどれかに誘導するべきってことです。」

「しかし、スカアハ様にお考えいただいた方が良い結論が出るかと。」

「今の体制は、そうやってスカアハに決めて貰ったものなんですよね。でも、うまく動いてないわけでしょ。」

思わず、軽い溜め息が漏れてしまった。