異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-03-29

そもそも、普段はどんな会議をやってるんだろうか。そこから聞かないとダメなんではなかろうか。

「コノーアさん、一応確認なんですが。」

「なんでしょうか、セタンタ様。」

不承不承というか、あまり納得のいっていない表情で大族長はこちらに向き直る。

「大族長として政務を執る時に、当然会議ってありますよね。」

「ええ。大きいものではエリン族長会議とワレンディル首長会議など、他にはタラの参事会議や巫祝長会議などがあります。」

今まで聞いたことがないものがあるので一応確認をとると、

ワレンディル首長会議は、人間以外の諸族の女王や王を招いて行うワレンディルの最高会議になりますが、最後に開かれたのはもう10年以上前になります。巫祝長会議は、大巫女長をはじめとした聖職者・判事の会議になります。こちらは2年に一度、五都市の持ち回りで開催されております。」

という返事が返ってきた。

「これも確認なんですが。国全体で一番権威がある会議は族長会議ですか。それとも、今話の出た『首長会議』ってヤツですか。」

「首長会議が最も権威ある会合になります。ですが、こちらは女神様のみが召集することが出来、非常時以外では開催されません。ですから、現実的な最高意志決定の会合はエリン族長会議ということになります。」

エリン族長会議の決定には、妖精族とか他の種族も従うんですか?」

「いえ、あくまでエリン族長会議の決定は人の間の法として取り扱われます。他の諸族には、人間族の法として連絡し、エリン族の領内ではその法に触れないように依頼しています。彼ら諸族は、それぞれの領内において『エリンの十法』に準じた『スカアハ法』や『スカアハ定款』と呼ばれる基本法の下に独自の統治をしております。」

その説明に、リャナン・シーさんの方を覗ってみる。

「コノーア殿の仰るとおりでしてよ、セタンタ様。もっとも、私どもは『スカアハ法』などとは呼ばずに『一なる定款(ゲシュ・エト・アール)』と呼んでおりますけれど。」

リャナン・シーさんは、どこか冷ややかな態度で肯いた。

リャナン・シーさんって、確か妖精の女王でしたよね。」

「ええ。以前はボアンの上流に居を構えるアネルの女王をしておりました。今は次代に責務を譲り渡して、隠居の身ですけれども。」

「そんだけ若くてお美しいのに隠居とかいわれても、実感湧かないですね。」

オレのセリフにリャナン・シーさんはくすくすと笑いながら言葉を返す。

「あら、誉める相手が間違っていらっしゃいますわよ、セタンタ様。」

その目配せに左右を見ると、なにやら冷ややかな視線を浴びせるお嬢様が二人+α。

「あー、脱線して悪かった。」

苦笑しながら話を戻す。

「と、いうことは。大族長はあくまでエリン族の統治代行者であって、スカアハの全権代理ではないって事なのね。」

「ええ。もっとも、先の大族長であったフィン・マッコール様は、『女神にしてワレンディルの大君主』というスカアハ様の代理人でもありましたので、大族長の職務にあるものが他の諸族の首長の筆頭者であるとは認識されています。ですが、厳密にいうと他の諸族は言わば、エリン族人間族と同盟関係にある他国と考えてよろしいかと思います。」

コノーアさんはそう言うと、リャナン・シーさんに確認の目配せをした。リャナン・シーさんも優雅に首肯して返す。

「つーことはさ。」

認識がきちんと折り合ったらしい二人に向けて、最後の確認事項を投げつける。

エリン族の統治には、大族長で全く問題ないわけですよね。少なくとも法制上は。」

「理屈上はそうなります。」

肯く二人。

「でも、実際にはエリン族だけじゃなく、えーとその、」

ワレンディル女王国、ですわ。」

「そう、その女王国全体の政治的統一が必要だって話ですよね?」

コノーアさんは再び首肯する。

「なら、スカアハエリン族代表だけで話を決めちゃダメなんじゃないですか。その、首長会議とやらに諮らないとダメなんでしょう?」

オレの言葉に、コノーアさんは虚を突かれたような表情を浮かべた。