異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-05-04

それまでの情報収集で、この一件の真の仕掛け手が誰であるかが漸く分かった。

マヨルカの老王は、花嫁を奪って逃げたペリグへの恨みから、ビスク伯の宿敵であるサラゴス伯と手を組んだのである。そして、サラゴス伯はアラゴン王の傘下にいる。つまりは、アラゴン王こそが真の黒幕と言うことになる。


「すまん。そのアラゴンとかサラゴスとかビスクってどの辺にあるのよ。」

「……モレナドールだ。」

「あー、すまん。オレ、まだこっち来たばっかりで地理には疎いんだ。」

なにやら呆れ顔のペリグを待たせて、何か書くものを取ってくれと頼む。

「石板でも木切れでもいいから。図が引ければ用は足りるんで。」

「では、こちらをお使い下さい。」

コルマクが差し出したのは、羊皮紙の束とインク壺と羽根ペンだった。

「もったいないだろ、これ。石板とかでいいんだって。」

「ですが、これが一番手近ですが。」

どうやら、守衛所で使うために置いてあるもののようだ。

「……んじゃ、一枚だけ貰うわ。」

「どうぞ、ご遠慮なく。」

恭しく礼をするコルマクに苦笑を返す。

別にエコがどうとか言うつもりはないんだが、この世界に来てからの貴重さにすっかり感化されてしまったというか、コピー用みたいなならともかく羊皮紙を使い捨てにするのはちょっと抵抗あるなとか、そんな感覚なのである。この辺、きっと言っても理解して貰えないだろうな。

やっぱ、の生産量が少ないってのはちょっと不便だね。スカアハとかコノーアさんとかに泣き付いてをもっと生産して貰うことにしよう。あと活字も。

そんな感慨はともかく、羊皮紙を手近な台においてざっと絵を描く。

「で、どこがどこだって?」

大枠で書いた地図に、ペリグの示した内容をこれまた大まかに書き込んでいく。



書き上がった地図を見るに、どうやら地名はオレの頭の中にある物とは微妙に違う物の、大体符合しているようである。

  • マルセル=マルセイユ
  • ロマ=ローマ
  • ジェノア=ジェノヴァ

とかそんな感じで。はっきり違うのは、ソフィアって町がイスタンブールっぽいくらいかな。

「で、このアラゴン王だかサラゴサ伯ってのが、ビスク伯と戦ってたわけね。」

「そうだ。アラゴン王は古い血筋を誇るがそれほど勢力は強くない王家だった。だが、当代のカルロ王は英明で、実際にはカルタゴナやマラギアの貴族にも支持者が多い。いずれは西アローン全体を統一するだろうと言われている。ビスク伯は、アラゴン王とは違ってヴァンダルの血を引いているから、モレナの血には従えないというわけだ。」

「……。」

なんか、詳しい説明を求めたら余計ワケわかんなくなったんですが。

だが、周囲を見回してみると、ロイグもコルマクも納得したような頷きを返していたりする。

……まぁいいや。あとでフィオナホーサにでも聞こう。

「で、そのアラゴン王とかいうのが黒幕ってのは分かったけど、そいつはなんでお前を狙ったんだ。」

「ビスク伯は、西アローン統一の覇業を掲げるカルロにとって頭上で揺れる剣のような物だ。いつ落ちてくるか分からないから迂闊に動けない。そしてそのビスク伯を海から支えていたのが俺、いや、俺をはじめとするマルセルの海商たちだ。」

その海商達を互いに争わせて勢力を削ぎ、マヨルカを自分の側に取り込む。というのがアラゴン王の思惑で、それは過去の因縁を焚きつけることで実に巧みに操作されていたのだった。

「そこで俺は、全財産を投げ打って軍船をかき集め、ロマニアやヌビアからも傭兵を雇い入れた。それで艦隊を組んでカルロに与した連中を片っ端から沈めて回ったんだ。」

「……なんだって?」