異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-05-24

「そもそも、息子さんはどういう病気なんだ?」

「眠り病だ。」

「……眠り病?」

オウム返しに聞き返したオレを、ペリグが怪訝な表情で見返した。

「えーと、名前からするに、眠ったきり起きなくなるような病気かな。」

と、助言を求めて肩の上のレーを見やると、レーはオレの視線に驚いたように飛び上がった。

「な、なんですかセタンタ様!」

「……いや、レーこそどうしたんだ?」

オレの問いかけに、レーは珍しくまごついた様子でチラチラとこちらを見上げた。

「その、セタンタ様があんなにお怒りになるなんて珍しかったので。」

そう言われればそうかもしれない。元々、オレは草食動物のように穏和で平和的な男だから、滅多なことで怒ったりしないのだ。今回腹を立てたのは、ペリグの言い分があまりに身勝手なものだったからだ。もっとも、親の子を思う気持ちというヤツは、得てして盲目的で自分本位なものではあるけれど。

「それに、そのぅ。」

「どーした?」

「もう怒ってらっしゃらないのですか?」

オレの問いかけに、レーは心底不思議そうに尋ね返した。

「ペリグのやったことは、どんな理由があったにしても簡単に許される事じゃないさ。ただまぁ、それはそれとして。息子さんやら奥さんやらは悪事を働いたわけでもないし可哀想だろ。何か力になってやれるかもしれないしな。」

セタンタ様……」

なにやら感心した様子のレーに、少し照れて言葉を付け加える。

「つっても、スカアハとかリャナン・シーさんに頼んでみないとどうにもならないだろうけどさ。」

その台詞に、レーは小さく頭を振った。

「もし、その子の病が本当に眠り病なら、セタンタ様でも治すことが出来るかもしれません。眠り病に関しては、メイヴ女王よりもセタンタ様の方が癒し手としての資質は優れていると思います。」

「え、……どーゆー事?」


子供がある日、眠りから目覚めなくなってしまう。

最初は半日や一日程度睡眠時間が普通より多い。またその症状の起こる間隔も非常に長い。しかし、次第にその睡眠時間が長く、間隔は短くなっていく。

そして、その眠りは際限なく長くなっていき、やがて目覚めることなく死んでしまう。

取り替え子病と並んで不治に近い病であり、投薬では治すことが出来ない。

レーが大まかに話してくれた眠り病の症状というのは、大体こんなものだ。

「ペリグの息子さんもそんな症状なのか?」

「ああ。その通りだ……。」

ヒゲだらけの顔を手で覆ったペリグは、力ない声で答えた。

「グリフは、長い時には1週間も眠ったままになる。もう二月は帰ってないから、もしかしたらもっと病が進んでいるかも知れない。」

ペリグの返答にレーは、多分間違いないでしょう、と頷いた。

その後、慌てたように

「その、本当は、リャナン・シー様にお伺いしないと分からないのですけれど。」

と付け加えたが。どうやら、それなりに確信はあるみたいだが、遠慮しているようだ。

「で、オレなら治せるってのはどういう事。」

「そ、そうだ!教えてくれ!」

オレの問いかけに重ねて、ペリグが身を乗り出して叫ぶ。

「わ、私も、書物で読んだり人づてに聞いただけなので、間違いがあるかも知れませんけれど。」

その勢いに悲鳴を上げて後退りながら、レーは言葉を続けた。