異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-06-01

食事の席には、オレとロイグとコルマクが端っこに座った。どうやらオレの席は上座に用意してあったらしいが、既に会食が始まっていたので端っこに座り込んで話し込みながら食事を採る。

ちらりと上席の方を見ると、ホーサフィオナと視線があった。二人とも、怪訝そうな眼差しを向けてくるが、笑顔で手を振って誤魔化しておいた。

焼きたての黒パンや結構なボリュームのあるハムソテーをいただきながら、赤枝の騎士二人から話を聞く。

「評判の方は、当然あまりよろしくはありません。」

人攫いの評判がいいはずはありませんがね。そう前置きして、ロイグはペリグとその一味の行状について調べ上げたことを話し始めた。

「山賊一味は、この三月ほど前から影の島で人攫いに手を染めていました。手口としては、小さな街道を往来する旅人を襲い、子供を掠うというものです。ただし、軽いけがを負った者はおりますが、直接殺された者はおりません。」

「直接、ってことは間接的に殺された人がいるってことか?」

「その通りです。子を掠われた親や乳母には、自ら命を絶った者が何名か。」

オレの問いに、コルマクが険しい表情で答えた。

「その後、街道の警戒が厳しくなると、あちらこちらと縄張りを変えて出没しています。ただ、最近は我々が街道の警備を強化していたので、小さな集落から子供だけを掠ったりしていたようでして。」

「被害の方は?」

「子供や女で略取された者が75名、けが人は40名以上です。盗難や火災を入れると余罪はさらに大きくなります。」

「うーん、そうか。」

ロイグとコルマクの告げた内容に、思わず言葉を失う。

誘拐75人に傷害40人、さらに強盗やら放火やら付いて来るとなると、ちょっとやそっとの刑罰では済まないだろう。

仮に犯罪者に非常に甘い現代日本でこれだけの犯罪を犯して捕まったとしたら、どれだけの量刑になるだろうか。やはり、主犯は無期懲役くらいにはなるだろう。

となると、もっと刑罰の厳しそうな影の島では、それ以上の刑罰を科せられる事は想像に難くない。

「なあ。ちなみに、普通に裁判をやったらどういう刑罰になるんだ、あいつら。」

気重な気持ちを溜め息に乗せて尋ねてみる。

「磔刑か梟首刑でしょう。手下のうち罪が軽く改悛した者は兵奴や農奴で済む者もいるかも知れませんな。」

肩を竦めるロイグに聞き返す。

「えーと。磔刑ってのは……」

「もちろん、磔台に掲げて、槍で突き殺す刑です。死骸は一月の間晒します。影の島では一番重い刑罰です。」

「じゃぁ、梟首ってのは」

「斬首です。首は梟首台に一月晒します。」

トントンと首を叩いてみせる仕草に、食事をする手が完全に止まってしまう。きっと表情は引きつっているだろう。

どっちにしろ死罪だから刑の軽重とも言えない気がするのだが、どうやら同じ死罪でもいくつか等級があるらしい。磔刑、梟首刑、斬首刑、絞首刑とあって、自殺を薦められる自裁は刑死として扱わないらしい。大陸にはもっと厳しい刑罰もあるそうで、スカアハの定めた刑法は比較的緩やかなものだという。

そして、誘拐はともかく人身売買は影の島最大の罪であり、極刑に処せられるのが通例だという。

「他の国では、奴隷商売は合法であることがほとんどでして、奴隷を扱っただけで死罪というのは我らの国だけでしょうな。」

そういうロイグは、口調の端に自信を覗かせている。どうやら、奴隷を禁じていることには賛同しているようだ。この辺、カスパル辺りとちょっと温度差があるようだ。

ともあれ、このままではペリグ一党が死罪を免れる方法はない。罪を一つ二つ減じても刑死が待っていることには違いがないからだ。