異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-06-14

あの妙に現実味のある夢のせいもあるし、ペリグが持っている能力が魅力的というのもあるが、何より話を聞いてみて情が移ってしまったのが大きい。何とかして助けてやりたいものだが、こればかりは簡単にいきそうにはない。

まず第一に、スカアハの決めた法に反するのはそう簡単なことではない。

情を持って法を犯す事なかれ。

と言われている以上、ただ情に訴えるだけでなく明確な論旨がなければペリグを弁護するのは難しい。

さらには、民衆の情に訴えるのも今のところ難しい。子供を掠う悪人に同情するような民衆というのは普通あまりいない。

となれば、よほどの理屈か、あるいはそんなものを超越する感動的な物語でも編み出すしかないわけで。

……とりあえず、情報収集に励むしか無さそうだ。

「……なるほどね。で、他に評判とか情報は。」

なんとか気を取り直して先を促す。

「どうやら連中、当初は奴隷を買い付けてコノートへ送っていたようです。」

ロイグは、手早く食事を済ませてしまうと、旨そうに冷えた水を飲み下しつつペリグ一味の行動を報告してくれた。

「大陸、それもブリガディアで買い付けた奴隷をコノートへと船で運び、コノートのメアブルで奴隷を引き渡し、帰りはメアブルから荷運びをしていたようです。」

「それ、儲かるの?」

思わずツッコミを入れてしまう。奴隷の値段次第なんだろうけれど『安く買って高く売る』ではなくただ貢いでいるだけだと、全く儲かるとは思えない。

「メアブルからの荷運びでそこそこ稼げはしたようですが、奴隷の方はペリグの持ち出しですから当然大きく足が出ていたようです。ですから、ペリグは最終的にそれまで得た船や土地などを売り払って資金を充当していました。」

「息子のためとは言え、家財を傾けちゃうとはすごい話だな。あの手下達、よくそんなペリグについていったな。」

「子飼いの手下が多かったのもありますが、どうやらコノートでメイヴ女王から世話してもらった者もいたようです。手当の遅配もなかったそうですし、ペリグの気前がいいのも人気の理由のですな。」

船乗りや兵士は食い扶持に敏感ですからな、とロイグは付け加えた。

結局は、自分を間違いなく喰わせてくれるという信頼感があるかないかが重要ということなんだろう。現代人の感覚だと割とその辺は当たり前のことで、その上さらに『やり甲斐』とか『スキルアップ』なんて求めたりするが、これは贅沢なことなのかも知れない。

「財産の切り売りなんかしていれば、金繰りに困るようになるのは当たり前ですが。ペリグは金策に奔走したようです。」

「その状況じゃ、貸し手がいないだろ?」

「友人がいくらか貸してはくれたようですが、金貸しは相手にもしなかったようですね。商売に投資しようというわけではありませんから、当たり前といえば当たり前ですが。」

「回収のあてがあるわけでもないしな。せめて資産があるうちなら話も別だろうけど。」

オレの言葉に、ロイグは溜め息混じりに頷いた。

「どうも、調べれば調べるほど、彼奴には計画性ってモノがないんじゃないかと思います。ともあれ結局。奴隷を買う資金が底をついて、直接奴隷を手に入れることにしたというわけです。」

やりきれない表情のロイグに、オレもスープの残りを飲み干しながら唸った。

「善悪とか何とかいう前に、直情的で後先考えないんだろうなぁ。もっと賢くやればいいのに。」

「えっ!?」

オレの台詞に、すぐ目の前の食卓で野菜を摘んでいたレーから驚きの声が上がった。

「えーと、オレなんか不味いこといった?」

「いえ、その。後先考えない人の代表みたいな方がそんなことを仰ったもので、驚いてしまっただけです。」

控えめに至って真面目に言うレーの発言に、周囲から大きな笑い声が上がった。