異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-06-15

オレだって真面目に色々考えてるんだけどなぁ。いざとなると頭から吹っ飛んじゃうんだけどさ。実際、咄嗟に衝動で動いちゃうのは否定できないわけで、どうにも具体的な反論の余地がない。

「ま、まぁそれは置いておいてな。」

誤魔化し笑いを浮かべつつ話を切り替える。

「オレには一つ解せないんだが。」

「なんでしょう。」

僅かに納得のいかない表情でコルマクが返事を返す。どうやら、ロイグとは違ってペリグを人材として活用したいというオレの方針には反対ということらしい。

まぁ、そんなにすんなり納得してもらえる話でもないだろうから、それはそれでいい。特にコルマクにしてみれば、数ヶ月にわたって手を焼かされた相手のことであるし、しかも最後においしいところをオレにかっ攫われたわけだから、忸怩たる思いがあって当然だろう。

ペリグの助命を考えた場合、まずは彼を第一に説得しなくてはならないだろうな。コルマクが納得するような説明を用意しない限り、スカアハを説得することは出来ないだろうし。

当面の目標として、心の中に一つメモ書きを残して話を続ける。

「そもそも、なんだってメイヴは奴隷を欲しがったんだ。」

オレが質問を投げかけると、ロイグとコルマクからキョトンとした視線が返ってきた。

「それは、やはりメイヴ女王が強欲だからではないでしょうか。」

「それとも、メイヴが並外れて好色だからかも知れませんが。」

と、答えにもならない回答が返ってくる。二人とも、それで用は済んだとばかりに肩を竦めていたりする。

「いや、それで説明終わりっつわれても困るんだが。」

オレの苦情に、二人とも困惑の態で顔を見合わせる。

「そう仰りましても。」

「メイヴには、スカアハ様以上に理屈は通じませんよ。」

なにやら、我が師匠に聞かれると随分と憤慨されそうな表現があるがそれはともかく。

二人の口ぶりからするに、メイヴという人物については暗黙の了解があるらしく、解説しづらい様子が見て取れる。ひとまず分かるのは、二人とも隣国の女王に対して軽蔑こそすれ、敬意など欠片も持っていないだろう事だけだ。

レーは、メイヴについては詳しい?」

「わ、わたしですか?」

河岸を変えて話を振ってみると、レーレーでなにやら口籠もって考え始めてしまった。

「そんな説明しにくい相手なのか? なんか容姿が名状しがたい軟体生物だとか、頭が三つあって口から怪光線を吐くとか、そんなんでもないんだろ?」

結構な美人だったはずだぜ、そう思ってから、はて、いつ顔を見たんだっけかなどと悩んでしまう。どうも最近、夢と現の境目がちと曖昧になっているような気がして仕方ない。

「メイヴ女王は、スカアハ様よりも古い女神です。」

漸く視線を上げたレーが、ゆっくりと語り始める。その声は、微かに憂いを帯びていた。


メイヴは、女神バンバの娘であり、自身も女王にして女神と讃えられている。コノートは彼女の古くからの領地であり、その統治権は影の島をかつて統べた三人の女神の領土割から続く由緒正しいものである。母バンバが身罷ってからは、500年以上にわたってコノートを支配してきたし、一時は影の島全ての女王であったこともある。

また、彼女の母バンバとその姉妹フォドラ、エリウは、影の島妖精達を生み出した張本人でもあるという。

ともあれ、メイヴはこの島に古くから住む女神であり渡り神の娘であるが、力は母達三女神に全く及ばず、また貪婪で淫乱で嫉妬深かった。特に、母神バンバが死んでからは、その気まぐれで戦や不和を招き、島内が収まらなかった。

結局、コノート族とは別の民であるエリン族が大陸から渡ってきた時、彼らはメイヴの支配を良しとせず、自分たちの神としてスカアハを招くことになったのだが、メイヴが優れた、あるいはせめてそれなりの統治者であったならば、影の島、いや古名の『バンバ』の主として君臨してたことだろう。


「私たち島の妖精族は、三人の女神様を祖と仰いでいます。ですから、メイヴ様の事を未だに女王として尊重している部族もありますし、それ以外の者にも特別な思いがあるのです。」