異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2008-06-29

「でだ。二人にやって欲しいことが二つある。一つは一味の再尋問。全員から聞き出して、メイヴと直接面識のある人間や、その人間と接触していた人間を割り出して欲しい。もう一つは、そいつらから手や書類をあるだけ手に入れて欲しい。特に金の動きと人の動きが分かるものをな。」

オレが依頼すると、コルマクとロイグは互いに目配せをした。

「実は。」

コルマクがオレを見ながら思案顔で口を開いた。

「かの一味は全員で28人。27人は捕らえましたが、残り一人には逃げられています。」

「あれ。逃げた連中は全員捕らえたんじゃなかったっけ。」

オレの疑問に、コルマクは苦笑しながら答えた。

「最後の一人は、ペリグと副長しかその存在を知らなかった男だったのです。最初、連中の別働隊が他にもあって、それとの連絡役ではないかと睨んでいたのですが、先ほどセタンタ様が推測して下さった話からその役割が見当付きました。」

「ってことはつまり、そいつが?」

「はい。恐らくは、コノートのメイヴが送り込んだ手配人兼監視役、でしょう。」

コルマクは肯定しながら、なにやらそわそわと腰を落ち着かなさそうにしている。

その言葉に、ちょっと考えを巡らせてみる。

もしその最後の一人が監視役だったならば、当然そいつはメイヴの手の者で、メイヴから直截なり間接的に指示を受けているに違いない。そこからメイヴの意図を探ることも出来るだろう。

そしてもし、メイヴの関与を明確に出来るなら、あるいはペリグの刑罰を幾分割り引くことが出来るかも知れない。せめて、死罪は何とか避けたいところである。

「うん。そいつの身柄を早急に押さえてくれるか。」

「ええ、すぐにでも!」

オレの言葉が口から出るやいなや、コルマクはそそくさと立ち上がって食堂から出て行った。

「……って、早いなおい。」

どうやら、さっきそわそわしていたのは、すぐに立ち上がって動きたいという気持ちの表れだったのだろう。

「コルマクって、その、なんというか直情的なんだな。」

呆気にとられているオレを前にして、ロイグは白湯をすすりながらニヤリと笑った。

「あの兄弟は貴公子然としてますがね。これがなかなか二人とも血の気が多い猪武者ですよ。」

そういいつつ湯を飲み干したロイグは、膝のパンくずを払いつつゆったりと立ち上がった。

「そのもう一人ですが。実を言うと既に居場所の見当を付けてあります。どうもトリムの町中に潜んでいたらしく、昨日から私の手の者を捜索に放っています。それほどかからずに居場所を掴めるでしょう。」

「手回しいいな。」

「ま、奴隷を捌く業者は見つけ出して残らず捕らえるつもりでしたからね。メイヴが関係あろうと無かろうと、逃がすつもりはありませんよ。」

いつもの軽妙な調子ではなく、真剣な様子で答えるロイグ。

どうもロイグは、奴隷商人に対しては強い敵愾心を抱いているようだ。ただ、奴隷制度について昨日話していた時は少し態度が違ったような気がする。

「なぁ、一つ聞いていいか。」

そこのところを、聞いてみると、ロイグは複雑な表情で歪んだ笑みを浮かべた。

「奴隷というか、私が許せないのは人攫いですな。人を掠って家畜のように売りさばく、そんな無法を許したくないから、赤枝の騎士として女神と大族長に忠誠を誓っているのですよ。」

胸を張って言い切るロイグ。だが、すぐに肩を竦めた。

「ですが、生活をしていくのはきれい事じゃ済まないのも確かでしてね。食い扶持がなければ他所から奪う、養えなければ身を売る。残念ながら、そういうことが無くならないのも確かです。身売りしても、我慢して働けば身を買い戻せるかも知れない。もしかしたら子供はきちんとした氏族民として身を立てられるかも知れない。だから、奴隷制全てに反対というわけでもないんですよ。」

そう口にすると、ロイグは一礼して部屋を出て行った。

「最後の一人は間違いなく捕まえますよ、任せておいて下さい。」