異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2009-03-29

夕食のメニューは、ブイイ、豚の骨付き肉、魚とタマネギの香草焼き、魚貝のスープなどでした。うまうま。

今日の食事の顔ぶれは、主にタラ市の参事会のお偉方が招かれたらしい。先日議会場を訪れた時に挨拶した顔ぶれがいくつかある。とはいっても、残念ながら全員の顔を一発で覚えられるほどオレの記憶力は良くない。議会に顔が利くメルキオルさんに同席してもらって改めて紹介を受ける感じで話すことにする。

といっても、今日のオレはあくまで聞き役。

「へぇー。染料を扱ってるんですか。染料ってのはあれですよね、服とか革とか染めるの。どうやって作るんですか。」

「ほうほう、原料の鉱石とかはどんなところから買うんです?」

「膠って動物の骨とか皮から作るんですね。知らなかったよ。」

「染め付けも自分のところでやってるんですか。それはずいぶん手広いですね。」

などと、相手を誉めつついろいろお話を伺うのに徹することにする。

何しろ、参事会の人間はほとんどが、この町の有力な商工業者である。となれば、少なくとも実業のプロやら一過言ある人たちであるわけだ。いろいろお話を聞かずに返してしまうは勿体ないというもんである。

「毛織物や鉱石、それ以外は嗜好品や工芸品かぁ。やっぱり嵩張らないものがいいんですか。」

「へぇ。すると、こちらから船には何を積むんです。」

「金属器ってのは意外だったなぁ。あとは染め物とかね。本なんかも?」

とまぁ、貿易商からどんな商品を扱ってるのか聞いたり。

「石工って何人くらいいるんです? このタラに。」

タラ以外の街やあっちこっちの道も作ってるんですか。そうだよなぁ。誰かが作ったり保全しないとああも見事に道がしかれてたりしないよなぁ。」

「人集めなんかはどうしてるんです? 結構人数必要でしょう。」

なんて感じで、石工の棟梁に話を聞けたり。石工って言っても、その実ゼネコンみたいな事をやってるようだけど。

最初、1時間ほどの予定だった会食時間をずいぶんオーバーして、参事会員の方々に話を聞かせてもらった。どうも、彼らの方もこんなに話を出来ると思っていなかったらしく、かなり上機嫌で帰って行った。

「顔つなぎが出来れば上々と思っていたでしょうから。セタンタ様と親しくお話をしたとなれば、彼らも自慢になるでしょう。」

などとホノボノしたことをいっているメルキオルさんであるが、こちらはそんなにのんびりした感覚ではない。

「メルキオルさん。明日からも、出来る限り参事会の人達を呼んでもらえませんか。特に、貿易や運輸に携わる商人や金融や決済とかに詳しい人、あと、投資先を探してる商人がいたら、優先的に呼んでくれると嬉しいんだけど。」

「それはかまいませんが……何をお考えですか。」

怪訝な表情を見せるフィオナの兄。その横で、少し離れた席で食事していたフィオナホーサも首を傾げていた。

「簡単なことさ。セタンタ様も商売をなさるんだよ。」

後ろから、カスパルがニヤニヤしながら近づいてきた。どうやら、離れた席から会食中のこちらの様子を覗っていたようだ。

「船を使ってなにか事業を興そう、そんな所じゃありませんか、セタンタ様。」

軽く目配せするカスパルに、苦笑を返しながら応える。

「ご明察。ただ、別にただ儲けるためにやるわけじゃないけどな。今商売をしてる人達とかち合わない、出来ればその助けになるような仕事ができないかと思ってるんだ。どう思う?」

「……実際には何をやるの?」

オレの説明には、ホーサが当然の疑問で返した。

「いや、まだ具体的には決めてないけどね。でも、人が仕事してればなにかしら、困ったことややりたくても出来ない事ってのはあるもんさ。それをいろんな人に相談しようってわけ。」

「そういうことでしたら。不肖この私、お力になりましょう。」

深く頷いて応えるメルキオルさん。力強いお答えで頼りがいがあるが、一応釘は刺しておく。

「このことは、とりあえずまだここだけの秘密ですよ。コノーアさんとリャナン・シーさんには相談するけど。でも、まだ何やるかも決まってないんだからね。」