異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2009-04-25

宴席も予定通りはけ、そろそろおやすみなさい的な流れに。

招待客が帰った後も何となく立ち上がりかねておしゃべりしていたオレ達だが、そろそろ寝ようかと就寝の挨拶を告げて順々に居室などへ戻ってゆく。

時刻は24時間制でいうなら21:00を回った辺りである。現代人の感覚で言えばまだまだ宵の口、ゴールデンタイムもいいところなのだが、こちらの世界では真夜中近いと感じる時間だ。朝が早いからね。それに、やはり夜間起きていると光源の問題がある。タラの町にこそ街灯があったりするが、田舎では集落全体が夜の闇に閉ざされる。松明やランプの油も気兼ねせずふんだんに使えるわけではない。夜更かしは結構な贅沢なのだ。

誰もが早寝早起きになるのはやむを得ない話である。

もっとも、子供が夜更かししたがるのはどこの世界でも変わらない話だ。ケルベロスシグルーンは毎日のように夜更かしを主張し、毎日のようにいすに座ったまま(あるいはオレの膝や肩に乗ったまま)眠りに落ち、毎日のようにお子様運搬業務がオレに回ってきていた。さすがにわがままっぷりに腹も立ったので、ついこの間はとっておきの怪談をしてやったのだが、そのまっ最中に寝入りやがったのには閉口した。一番反応してたのがベレヌスってどうよ。

閑話休題。

オレが思い出し苦笑などをしていると、横に立ったフィオナが気味悪げなまなざしで首をかしげていた。

「……家と違ってケルベロスを寝かしつけないで済むのはラクだな、とか思ってましたがなにか?」

「……そうですか。そういば、しばらくあの子たちにも会っておりませんね。」

「ああ、そっか。もともとフィオナを呼び戻しに来たんだったな。途中であんな騒ぎに巻き込まれて、ソッチばっかり気になってたけど。」

なんだか、成り行きの奇妙さに笑ってしまうと、フィオナもオレに合わせてふっと笑みを溢した。何はともあれ、この一件が落ち着けばフィオナもオレ達と一緒にスカアハの館に帰ることができるだろう。

「そろそろお休みになりますね。お部屋にご案内いたしますが。」

いい雰囲気でひとしきり笑顔を交わすと、さて、と立ち上がってフィオナが案内を申し出た。

「いや、ちょっとコノーアさんに話をしてくるから、フィオナは先に休んでてくれ。オレはもう一人でも大体場所わかるし。」

「父ですか。いったいこんな時間に何を。」

「さっきの、商売の話やら何やらを、一回耳に入れておいた方がいいと思ってね。」

オレの説明に、フィオナはまた首をかしげた。

セタンタ様が事業を始めるのに、父の許しはいらないと思いますが。」

うーん。どう説明したものか。

とりあえず敬語だと話しにくいので、身内以外の人目もないことだし普通の言葉に戻してもらうよう頼む。肩をすくめてうなずくフィオナ。モードが切り替わると表情もちょっとりりしい感じになるんだよね。

「仮に、コノーアさんが全く知らないままオレが話をどんどん進めてしまうとしよう。」「ああ。」

「そんで、オレが商家とかにいろいろ約束したり頼み事をしたりする。」

「そういうこともあるだろうな。」

フィオナは先を続けろと促す。

「そういう頼み事とかの中身が、コノーアさんの考えていることの邪魔になったり対立しちゃまずいだろ。もちろん、そんなことにならないように気をつけるつもりだけど、もしかしてってこともある。」

「うーん。だが、セタンタ渡り神で、大族長よりも立場は上だ。セタンタが決めたことなら、父上と言わずエリン族、いや、女神様の権威に従う者ならば逆らいはしないが。」

言外に、そんなに回りくどいことをしなくても好きにやればいいのにという言葉を臭わせるフィオナの発言に、ちょっとした嬉しさと、それを大きく上回る危惧を感じて慌ててしまう。

「待て待て。オレを信用してくれるのはありがたいが、オレの方が立場が上って言うなら余計利害の調整はしとかないとまずいよ。オレが決めたことに表立って否と言えないんなら、どういうことをするのか事前にちゃんと擦り合わせておかないと。後でほんと困るから。」