異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2009-05-10

暫し頭を抱える。

「証拠隠滅か……ふふふ」

セタンタ様!ダメですよ!お気を確かに!」

と赤い玉を床にたたきつけるか本気で考え始めたところでレーに止められたので、はっと正気を取り戻す。危うく貴重な品をぶっ壊してもっと怒られるところだった。

「……術ってオレでも覚えられる?」

スカアハ様から教えていただけば、恐らく。」

レーの回答は非情であった。

うーむ。結局姐御には見られることになりそうね。とほほ。


少しすると、タイミングを見計らっていたのか、女中さん方が控えめなノックの後に入ってくる。

「本日はエマ姫様が所用にて、セタンタ様の身の回りのお世話を果せぬ事となりました。お詫び申し上げるように言付かっております。」

「ん。ああ、そうなんだ。なんだろな、所用って。」

「女神様をお迎えする準備の一環とのことです。」

「へー。まぁ、一日オレにべったりしてるのも大変そうだしな。オレは問題ないですよ。」

「では、まずはお着替えからお手伝いいたします。」

そう答えると、女中のリーダーらしきおばちゃんお姉さんが指を鳴らす。ワラワラと現れるお嬢さんからお姉さんまで十人もの女中さん達。

「うは!ちょ!ま!」

本日も流れに身を任せ、丁寧に剥かれてお着替えさせられてしまいました。これ、タイミングを見計らってきちんと断れば自分で着替えられるんだけど、不意を突かれるとそんな隙も無いんだよな。お姉さん達恐るべし。


朝食を摂りに食堂へいってみると、これまたビックリするほど人数が少ない。赤枝の連中が数人とカスパル、そしてホーサ。昨日あった鉄拳さんとか団長の鬣さんとかが居ないのはまあいいとして、肝心のコノーアさんが居ないのが何とも。

「コノーアさん、今日も忙しいの?」

向かいに座ったカスパルに聞いてみると、肩を竦めて頷き返した。

「あれで、我が父も政権首班ですからな。何かと立て込んでいるのですよ。首長会議を召集する準備やらなにやら。セタンタ様も一枚噛んでいるのかと思っていましたが。」

そういってのんびりとパンをちぎって口に放り込むカスパル。

「ま、焚きつけはしたけどね。オレが出来る助言なんて、当事者じゃないから見えるところを指摘するだけだからね。結局、問題を整理し直してみれば、あとは当事者が頑張るしかないんだよ。」

と、そこまで言ってから気付いた。

「そもそも、カスパルさんこそ今一番忙しいんじゃないの? そんなにのんびりしてていいのかいな。」

オレの問い掛けに、ニヤリと笑うカスパル。

「私の仕事は『人に指図する』ことですから。既に手配りは終えています。ま、納品の検収やら進捗の確認やら、明日からはまた忙しくなりますし、今日だってそれなりにやることはありますがね。」

余裕綽々で笑う姿が何とかくムカツク。どうもこの人、能力はあるのになるべく仕事が回って来ないように上手いこと立ち回っている気がする。それが悪いとは言わないが、周りが多忙な時にあからさまにヒマにしてると、それもどうよと思ってしまう。

……ああ、誰よりもヒマにしてるのオレじゃないですか。

なんか一気に脱力しつつスープを飲み干す。

「今日もコノーアさんに時間を取ってもらうのは難しそうだな。とりあえず、覚え書きでも渡しておくかね。」

女中さんに頼んで、何か書くものを持ってきて貰おう。

スカアハが到着するまで、実質今日か明日だが、少しでも時間はとって欲しい。かといって、そんなにいっぱい時間をとらせるわけにもいかないので、要点を事前に渡しておこうというわけだ。提案書とか目論見書の極々簡単な奴といった感じである。