異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2009-11-03

さて、本日のスケジュールがいろいろあって夜まで空いてしまったわけである。

フィオナがいればなにかと見物やらなにやら気を回してくれるのだろうが、あいにく所用がある。カスパルはカスパルで一応仕事があるらしいし。赤枝の騎士達はこちらの仕事を頼まれてくれたので、当然そのために動いてくれるということで既に席を立ったあと。

というわけで広い食堂にはオレとホーサレーの三人が残った。

ホーサは今日の予定どんな感じなの?」

と水を向けてみると、それはもう楽しそうに笑顔で返してくれた。

「今日は馬場で子馬の様子を見るの。春に生まれた子馬がずいぶん大きくなってきて、馴致を始めているから。あと、蹄鉄をつけ始めた子がいるから様子を見たり……」

うん、どうやら今日は(今日も)ホーサを馬達が貸し切るらしい。

ちなみに、馴致というのはただの馬を乗用馬にするための訓練だそうである。

馬は大変臆病な生き物で、見慣れないもの嗅ぎ慣れない臭いには非常に強く反応してしまう。鞍や馬銜などの馬具は特に馬にとって負担を感じるものらしく、子馬のなるべく早いうちから慣れさせておく方が良いということだ。馬具に母馬の臭いをつけたり視界の隅に目立たないように置いたり、いろいろ涙ぐましい工夫があるらしい。

あと蹄鉄は、どうやら影の島では元々あまり普及していなかったそうだ。

というのも、影の島では馬の到来自体が比較的最近で(といっても200年くらい前だというが)野生馬に近いような飼育がずっと進んでいたらしい。

「放牧している馬は蹄が鍛えられるから、蹄鉄を付けなくても平気だったんだけど、アローンは土地が柔らかいせいか蹄を痛める馬が多いの。だから蹄鉄を履かせて蹄を守るようになってきたの。」

ということだ。

蹄鉄職人は鍛冶師の中でも高度な技が必要で、影の島はその技をスカディランドの馬蹄師から学んでいるそうである。そのスカディランドの蹄鉄技術も、元々の源流はスカアハだったりするから、姐御のスーパーウーマンぶりが良く分かる話である。

ともあれ、ホーサはその蹄鉄技術をタラの馬蹄師から学び、逆に馴致などでは騎士団の馬丁頭などにいろいろアドバイスして情報交換しているらしい。

「あ。そろそろいかないと。また夕方に、ね。」

どうやら話し込んでしまったようで、窓から差し込む陽光から時刻に気がつくと、ホーサはかわいく手を振って席を立った。

うん。どうやら振られてしまったようである。

別にホーサと一緒に馬を見に行ってもよかったんだけど、あんだけ楽しそうにしてるのを素人のオレが一緒に行っていろいろ質問したりして邪魔するのも気が引ける。

まぁ、またの機会にでも一緒させて貰うとしましょう。あの暴れん坊マッハ君の手懐け方とか知りたいしね。

「さて、今日一日どう過ごしますかねぇ。」

なんとなしに肩の上のレーに呼びかける。

「精神修養のために瞑想とかいかがでしょう、セタンタ様。」

「あ、うーん。そうだねぇ。」

実にレーらしい平和な提案であるが、そういうのは姐御ハウスで修行の合間にやるんならともかく、わざわざタラに出てきてやらんでも、とか思ってしまう。日々これ精進、って考え方としてはいいことだと思うんだけど、今日はちょっともう少しアクティブに過ごしたい気分である。

「出来ればどこかに……」

と口を開いたところに丁度、扉を開いてリャナン・シーさんが現れた。

セタンタ様。申し訳ありませんがレーをお借りしてもよろしいでしょうか。」

「ええ、かまいませんが。」

事情は良く分からないが、レーの顔を見るに心当たりがあるらしい。

「昨日お聞きしました件でしょうか?」

「ええ。例の眠り病だけれど。」

どうやら、ペリグの息子の件らしい。立ち話を始めた二人に、話が長そうだしオレは大丈夫だからレーを連れてってやってくれと促す。

「では、セタンタ様。少しいってきます。」

「昼にはお返しいたしますわ。」

そう丁寧にいう二人を笑って送り出す。レーも仕事とは言え、いつもいつもオレに付いてたら疲れるだろうし、丁度いいかも知れない。

「さて、オレはどうしましょうかね。」