異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2009-11-15

「で、そのね。オレが来たのは、マウルさんかロイグ辺りに聞きたいことがあってだね。」

「そ、そうですか。生憎、マウル殿もロイグ殿も出ておられますが。」

気まずい空気を振り払おうと、慌てて話を転換する。ウルタナ氏(嬢?)も、漸く冷静に応答してくれた。

「そしたら、コルマクとか……そうだなぁ。ノイシュとかカテナシウスとかポーでもいいけど。」

オレが言うのに、ウルタナは首を振った。

「申し訳ありませんが、只今赤枝の騎士は全て出払っております。カテナシウス殿が昼までにはお戻りになりますし、それ以外の方も夕刻までには戻られると思いますが。」

「そっかぁ。」

何とも間の悪い話であるが、よく考えてみればしょうがないというか、当たり前の話だったりする。

マウルさんやロイグにはペリグの一味の背後関係を洗って貰っているし、コルマクもノイシュも確かこの件で動いていたはずだ。オマケに今朝、カテナシウスとポーにも判事への確認を依頼してしまった。

そして団長と副団長はスカアハ来訪の警備の大詰め。

……そりゃ確かに人が出払ってるかもしれんな。

「例の山賊一味の件で聞きたいことがあったんだけどね。まぁ、無理なら出直すか。」

オレが溜め息をつくと、小柄な騎士は胸をどんと叩いた。男物の厚手のチュニックを着けているせいかもしれないが、それにしても女性と認識するにはいささか厚みが足りない。足りなすぎる。

「私は栄誉ある赤枝の騎士ではありませんが、留守を預かっている以上、一通りの事は分かると自負しております。安心して御用向きをお聞かせ下さい。」

そう自信満々に言い放つウルタナ。

「そうかぁ。だったらもしわかったら教えて欲しいんだけど。」

「なんなりと。」

「実は……」

山賊の被害にあった者やその家族に会いたい、という旨を伝えると、ウルタナは胸を張って快諾した。

「お任せ下さい。一週間も頂けば主立った者を集めてご覧に入れます。」

「え?」

「……え?」

オレの反応に、不審げに首を傾げる。どうも、この騎士子さんとオレは今ひとつテンポというか認識が噛み合わないようだ。

「できれば今日これから会いたかったんだけど。タラ在住の人っていないだろうか。」

オレのその発言に、途端に渋面を浮かべ腕を組んで唸ってしまった。

「山賊は主にアルスターやレンスターの辺鄙な村落ばかり狙っていましたので、タラ市内には被害を受けた者はいません。……いや、一人だけいましたね。」

「ほう。その人紹介してくれない?」

「ええ、構いません。他国の交易商人ですがミョイグネンと申しまして。一人娘が掠われたということで大変な心配をされていまして、山賊討伐と娘の救出を各方面へ働きかけていましたので、山賊の被害者の仲では最も有力者と言えます。セタンタ様が救い出した虜囚の中にその娘もいたと思います。」

その言葉に、オイフェさんの清冽な魅力を思い出して頬を緩める。オイフェさんは実にいい。何がいいって美人なのにお淑やかで暴力の気配がしない点が。

そして先日話したその父ミョイグネンを思い出して口をへの字に曲げる。あの一見落ち着いた紳士なのに娘のこととなったら取り乱すこと取り乱すこと。いい人なんだろうけど、あそこまで娘ラブだと正直ちょっと引くわ。

「どうされましたか。変な顔をされて。」

オレの一人百面相を真っ正面から見ていたウルタナは、薄気味悪いものでも見る様な視線を向けていた。こういう表情がまんま顔に出ちゃうのはどうなんだろうと、お兄さん的にはちょっと心配である。絶対そのうちこれが原因で揉めるぞ、きっと。

「ミョイグネンなら会ったことあるし、家も分かるから大丈夫だ。行ってみることにするよ。」