異世界日記 『第四部 見習い日記学舎編』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

 ■本家サイト作者ブログはつせの世界メール

2009-12-27

ウルタナさんの話を要約してみるとこんな事になる。

セタンタ様に気に入られたので強引に愛人にされてしまう。』

そう思ったらしい。

「オレはいったい、どんだけ女好きだと思われてるんだ。」

呆れ口調で思わず漏らすと、ウルタナさんはごくごく真面目な顔でこういった。

「むしろ、禁欲的な神様よりはよほどよろしいかと。子を増やすのも渡り神のお役目ですから。」

そりゃまぁそうだろうさ。子供作らない女神様のおかげでいろいろ揉めてるわけだし。

でも、正直なところ政治のためにとか体制のために子供を作れ、ってのはちょっと退いてしまう。

「うーん。そう言う話されると、なんというか、かえって萎えるんですが。」

「お気持ち、判らなくもありません。ですが、慣れていただくしか無いと思います。」

そう言うウルタナさん。神族の皆様とは比較にもなりませんが、と前置きした上で、族長の一族でも政略結婚は義務となっているという話をしてくれた。もし仮に恋人などができたとしても夫婦になることは許されない。結婚は人と人の結びつきではなく家と家の結びつきだからだ、ということらしい。

「そんなもんですか。」

納得できるような、納得できないような。そんな気分で生返事をすると、ウルタナさんも

「ええ、そういったものです。」

とか妙に煮え切らない答えを返す。どうやら、何かしら思うところがあるようではある。

そんな妙な会話を続けているうちに、酒気は完全に抜けていた。


「じゃ、仕事中に邪魔して悪かったね。」

感謝の気持ちを込めて握手をすると、ウルタナさんはしっかりとオレの手を握り替えしてきた。

「お役に立てて光栄です。」

「またたぶん邪魔すると思うけど、そんときはよろしく。」

そう笑いかけると、小柄な騎士嬢は生真面目そうにいつでも歓迎すると言いつつ、

「ですが次からはお酒はお出ししません。」

と付け加えた。

「彼らはぜひ帰りの足に使って下さい。」

「いや、帰りは歩いてくるから行きだけで十分だよ。ホントありがとう。」

手を振って船に乗り込む。

「ミョイグネンの屋敷までお送りしろ。くれぐれも粗相の無いように。」

「承知でさ!」

船頭が威勢よく答えて合図すると、細長いボートの前後に付けられた引き綱を埠頭の人足達がかけ声をあげて引き始めた。かなり大きなボートが次第に水門へと引き寄せられていく。

充分に船寄せから離れると、両舷に座った漕ぎ手が長いオールを水面に下ろす。

「水門を開けよ!」

オルタナさんの指図でガラガラと鉄鎖の鳴る音が聞こえ、巨大な鉄格子が城壁の上に聳える望楼へと引き上げられた。

櫂の音とともに加速し始める船の上で、後ろを振り向いて手を振る。そうすると、胸を張って立つ小柄な騎士が胸元で小さく二回手を振り返してくれた。

船首が水面を切り裂く音が次第に大きくなり、船は水門を潜って外堀へと出た。ウルタナさんの姿も壁の向こうへと消えた。

セタンタ様、ご挨拶遅れました。船頭のラゼイと申します。短い間ですがお命をお預かり致します。」

「あ、ああ。よろしく頼むよ」

船頭の直截的な挨拶にドキッとしながらも返事を返す。礼儀としてどうなのかは判らないが、責任感は感じられる。

「ところでセタンタ様。ぜひ後学のために一つ教えていただきたいんですがね。」

「……なんだろう?」

「あのクソ真面目で男そのもののウルタナ様を、一体全体どうやって口説き落としたんですかい。あんな可愛い姿初めて見ましたが。ぜひ秘訣を教えてもらえませんかねぇ。」

船頭のからかうような口調にどっと乗り手から笑いが上がった。

「うーん、なんだろうね。追い掛けると逃げる、逃げると追ってくる。女性の心は陽炎みたいなものなのかもねぇ。」

冗談めかして答えたら、みんな真剣な表情で「含蓄があるな」とか言ってて今度はこちらが噴き出してしまった。